世界大恐慌と呼ばれた二十年代に、己の拳で家族を養いと不況の真っ只中で
活躍したボクサーの伝記を映画化したのが、この「シンデレラマン」である。
時に日本の今の世相は「派遣切り」とか非正規社員の突然の解雇とかで、マスコミ
の論調でいえば、正に大恐慌時代と変わらぬ空気が淀んでいる・・・。
http://jp.youtube.com/watch?v=0-W3rv0yKf4&feature=related
「シンデレラマン」 〇五年公開作
ジェームス・ブラドックというヘビー級チャンピオンの半生を描いているのが、この作品だが
原作の読後感と違った感覚は、いつの間にか不況で苦しむ労働者の「希望の星」と担ぎ上
げられる主人公が、とても紳士的で今ひとつ「貧困」が伝わってこない・・・。
艱難辛苦を乗り越えて栄光を掴む、一種のサクセス・ストーリーなのだが、映画はメリハリが
足らぬ、いやテンポ良いスピードが不足して、印象はこれでもかの「貧乏」を延々と描き、明るい
雰囲気は皆無で、愛情物語も分からないではないが、そちらに傾倒しすぎで、主人公が戦うべき
本来の目的が実際は「金」にあるのにもかかわらず、そこら辺は演技からは伝わってこない。
史劇での男を描いたものでは、それなりに魅せてくれたラッセル・クロウも・・・。
そして強力なチャンピオンの描き方も「粗暴な男」として描くから、勧善懲悪的物語みたいで、ずれ
てないかいと舌打ちしたくなる。
まして「勝てない相手」と殺されるハードパンチを強調しすぎて、ずんと重くなってくる。
まぁ、描くのに大恐慌下の世相的に、暗いのは仕方が無いとしてもテンポまて遅く、場面展開もかった
るいのはいただけない。
そしてタイトルマッチの汗握る熱戦が、勝利する瞬間、興ざめしてしまう。
あれだけ打たれた人間が、右手を掲げられる時には、綺麗な顔ってありえないだろう。
ここらももう少しメイクを入念に施して、それなりの苦戦を勝利したでないと、「ドッチラケ」・・・。
バックの音楽も、「森田童子」の旋律を知ったかのようで、映画には合っているのだろうが、今ひとつ
感情移入できずじまいだった。
アイルランド移民対ユダヤ移民と、アメリカでの対決・・・、それが紳士的、貧乏とか時代背景を念入りに
考証したにも拘わらず、浮きまくる服装・・・、これはがっかりするボクシング映画だ。
と、私にとっては今一の作品でありました。
- シンデレラマン (ブルーレイディスク)
- ¥4,441 といったところで、またのお越しを・・・。