喝采と生身の人間の限界と「ロックスター」「ジャズシンガー」 | 流浪の民の囁き

流浪の民の囁き

映画を通した過去・現在・未来について、なぐり書き

名を世間一般やその界隈で知られるようになった時、自分が憧憬を抱いた対象は

自分が思い描く世界だったか、はたまた虚構の中の虚像だったか、肌身に感じる

世界と、それとは一線を科す虚構となって行く自分の身の上に、生身の心はついて

いけない・・・。

そんな一般とかけ離れた世界として音楽業界への憧憬と、地味な生活のギャップに

翻弄されて、いつしか一般的常識を取り戻そうと悪戦苦闘する人に焦点を当てた映画

に、この「ロック・スター」や「ジャズ・シンガー」は当てはまりそう・・・。



流浪の民の囁き-ロックスター


http://jp.youtube.com/watch?v=2yCK60VeEuc

「ロックスター」 〇一年公開作


ヘビィーメタルとか、ロックが細分化されて、変貌していったところにロック・バンドへの

憧れを抱くファンが、コアな深淵へとたどり着けば、同化感覚を共有する狂信性が発生

し現実世界と祭り上げられた神格化した世界の狭間がなくなり、コピー・バンドとはいえ

そのライブにおいて、それに限りなく近づき、夢心地に陥る。

そんな熱狂的ファンが、その夢中になるバンドからお呼びがかかり、ボーカルとして拾い

上げられる・・・。

これも一種のサクセスストーリーではあるが、既にあるバンドのサウンドを真似ている限り

それ以上とはなり得ず、自分もバンドにとって一部品で、そこには創作される音楽はなく、

以前の音に忠実な再現という、コピーと同じ境遇・・・。

もっともバンドの一員であるから、周囲の視線は熱くなり、それが正常な思考を狂わせ、

いつしか自分の位置も分からなくなる。

ロックの成り立ちから、既に時は過ぎ、完全にショービジネスに取り巻かれたロックの位置

が限りなく商業的音楽の範疇に陥ると、そこから脱せずにその中で洗濯機に放り込まれた

かのようなめまぐるしい興行で、同じ歌を同じようにただ歌うロボツト、束の間の休息は女で

再び観衆の前に、それの繰り返しに陥る虚無感と、見ていた時の興奮が何であったか、憧

れのバンドの裏側は・・・。

と、まぁ、ロックに限らずの「金儲け」がメインとなった時、将棋の駒となるのを悟るジレンマ

から、一時の逃避として薬物への依存が生まれる・・・。

名声を得、金持ちになり、そして残るものは・・・、普遍的生き方へのアンチテーゼをロックも

例外ではないと映像にしたためた一本だが、ヘビィーメタルからの脱出としてのアコースティ

ックへの回帰ととれるラストはいただけない・・・。



流浪の民の囁き-ジャズシンガー

http://jp.youtube.com/watch?v=XlqR7HUuIrw&feature=related

「ジャズ・シンガー」 八十年公開作


こちら題名はリメイク作品らしく同じになっているが、ショービジネスとしてのロックと、

上の作品の元となったようなもの。

主演はニール・ダイヤモンドで挿入した曲がヒットし、このサウンドトラック・アルバム

もヒットしたものだが、作品としてはいささかそこらにある物語で盛り上がりにも、また

映画としての出来も今一なもの。

第一リメイクだろうが、ジャンル的にジャズとロックではもともとの出発点は同じでも、

頭にイメージする旋律が違いすぎて、違和感一杯になる。

まぁダイヤモンドをロックと規定するのも、またその通りで大衆娯楽ポップスだと、すん

なりなんだが・・・。

音楽は聴いていて心地良いが、ストーリーはプロモーションと・・・。


映画の中でバックに流れる音楽を主題に捉えると、どうもいけない。

これが伝記ものだと、それなりにまたジャズであれば、「ラウンドミッドナイト」みたいな秀

逸なものもあるのだが・・・。

そういえばジャニスをモデルにした「ローズ」も、あの主題歌は良かったが、さて物語りは

となれば、いささか退屈で・・・。

ロック・スター (期間限定)
¥621                             といったところで、またのお越しを・・・。