意味不明な輪廻転生「幻の湖」 | 流浪の民の囁き

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映画を通した過去・現在・未来について、なぐり書き

大金をつぎ込んでも、観客に呆れられる映画は東西を問わずあるもので、

それらのものにある程度、共通しているのが製作ないし脚本家が監督を

してしまったものに、それらが見られるのは、表現力のあるいは思わぬ勘

違い、またはいい物を作るスタッフ欠乏か、言いなりのスタッフによって、

世に送り出されて評価に愕然とする・・・。そんな映画に橋本忍の「幻の湖」

も入りそうな意味不明さを漂わせていた作品だ。



幻の湖


http://jp.youtube.com/watch?v=YQVelzIYf8s

「幻の湖」 八十二年公開作


主人公の現在・過去・未来と捉えれば、それなりに映像も説明はつく・・・。

大真面目に宗教を語ると、滑稽な物語の出来上がりとも取れる出来には、

唖然とする観客と不評・・・。

ここで視点を犬にすると、野良犬とは過去において、うんたらかんたらと、

宗教の輪廻転生から不幸にも現在は犬という境遇になって・・・。

この歴史のない宗教観というものが、ここで犬に象徴されて、それを同士と

思い込む女の行動が、普通であれば際立つのだが、宗教観にこだわれば

同士の無残な死は「決して許せぬ蛮行」と主人公には映る。

ゆえに狂気じみた行動で、主人公はどこまでも犯人を追い詰める。

そして犯人の死が、現在・過去を昇華させ天空への解き放ちへと連なる。

ここらはもろ宗教が脚本に現れた結果で、歴史のない宗教とは、新興宗教

という大概は神の啓示があったという教祖が起こすものだが、ここに製作者

としての宗教が見え隠れする。

これの前に「八つ墓村」でも触れたが、この映画も過去・現在と過去に囚われ

た部分が多い感じになっているのは、この宗教と考えれば納得出来る。

ようするに犬に象徴される迫害されるもの、それを庇護するもの・・・。

ここらにこの宗教の特異性があるが、それを直線的に表現すれば日本では

全く受け入れられないだろう。

しかし犬というところに、顕著な関心がある。いや犬は食料とする民族にとって

は、犬が神として崇められる地区には、拒否感が生まれる。

神仏を現世利益というまやかしでうやむやにするしか出来ない宗教の、いかが

わしさがじんわりと湧いてくる。

この映画を笑いながら鑑賞出来る精神性は、正しい。

これを頷ける精神には、もろ病んでいると解釈すれば、それこそ正常である。

「人間革命」「続・人間革命」という一宗教のおべっか映画制作は、それまでの

作品の評価に暗い影を落とす結果になってしまった。

そして「私は貝になりたい」をリメイクだが、生活感の全くない大根役者を使って

しまっては、フランキー堺の名演をぶち壊してしまって、ここでも作品の質を落と

してしまうのか・・・、それでは折角、ヒント、いやパクッられた人も浮かばれない。

と、横溝正史の原作からかけ離れた作品にした「八つ墓村」から、この作品へと

脚本家の軌跡は宗教へのこだわりと、感じてしまう映画ではあった。

幻の湖 [DVD]
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Amazon.co.jp                        といったところで、またのお越しを・・・。