現在なら可能になった「ブラジルから来た少年」 | 流浪の民の囁き

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映画を通した過去・現在・未来について、なぐり書き

一時期、クローン羊が、そして牛へと移り、自然な発生でない生命の誕生に

賛否が集まって話題になったが、それは勿論人間への転用があるからで、

倫理観と科学的研究はこれからも相容れないかもしれない。

そんなクローン技術を駆使して、一人の人間の者だけを再生して、復興を

計ると、今では可能性がある事柄を想像の産物として、とても面白い物語と

したのが「ブラジルから来た少年」である。



ブラジルから


http://jp.youtube.com/watch?v=-xC6MEhmanU&feature=related

「ブラジルから来た少年」 七十九年公開作


発想は勿論、ナチス・ドイツの総統であったヒットラーのクローンで、ナチスの残党

マッド・ドクターとしてグレゴリー・ペック演じている博士と、ユダヤのナチス犯罪を究明

しているイスラエル人との対立を基軸にしたサスペンスである。

ドイツ人、ユダヤ人と色分けされているが、俳優はそれらとは違い、その点はいささか

違和感があるのだが、このヒットラーのクローンの発想は大変面白かった。

それらが全世界に散らばり、聡明だが冷淡な性格・・・。

もっとも家庭環境によっては、性格の変化が見られるかも知れないと、十四歳となり、

父親が六十五歳で色々な命の落とし方をする。

それに疑問を持ち、そして空恐ろしい計画を知りと、なかなかに原作が練られたものだから

その点の違和感はなく、引き込まれていく。

第三帝国から第四帝国へと、狂信的崇拝者としてジェームス・メイスンもとてもドイツ人には

見えないが、好演している。

ここらはもう完全な宗教と相成って、それを阻止する者の機軸も宗教から来る庇護を最後に

見せてしまうと、人間における信じることの危険性と、また信じることで安寧を得られる脆弱な

資質を見せられていると、戦争への道はおのずとその対立が際立ってくる。

盲目的に信じてしまう宗教で、それが集団となればそれからの離脱には相当の精神力が必要

なのではないか、「流される」、それを抗う気力、いや流される方が楽となれば・・・。

この映画は、その善悪を超えて、狂信してしまった者達の曲げられない信念が恐ろしく、夢想する

世界が理想と思えば、それがいかに多勢を不幸に落とし込んでも実行出来る活力となる。

その人間の精神性にこそ、もっとも危険なものが内在しているを映像化したともとれる。

そしてストーリーがなにより面白いと思うのは、読むなり見るなりして、それを感じ取るためだ。

もっともこれが日本では未公開であったには、いささか当時の変な勢力の圧力も感じるし、また

ヒットするかに疑問を持つ配給会社の人間の意識の低さか・・・。

これが今は販売している、「時代は変わった」からか、狂信的行動に対する善良な人々の無力な

さまは「元厚生次官殺傷事件」が、まざまざと見せている。

なんらの危険も感じず、平穏な暮らしに潜む狂気、それが集団であればテロも、それよりも危険が

際立つのは、実際は思想・信条の洗脳で、それが宗教と結びつけば、今回の犯人をいくらでも作り

出せる・・・。と、まぁ、復興に命を賭ける人と、それを阻止する人、いつまでも人間の世界には争いは

絶えないことだけは、理解出来る。自然界から言えば、いや地球から言えば「人間は邪魔者」と叫ん

でいそうで、人間が滅亡すれば、地球は甦るらしいから、せいぜい争いは内輪の口ゲンカでストレス

を晴らすのがベストなのだろう。


ブラジルから来た少年
¥3,591                           といったところで、またのお越しを・・・。