懐かしいかな日本のボクシング映画「百万弗を叩き出せ」 | 流浪の民の囁き

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映画を通した過去・現在・未来について、なぐり書き

ボクシング映画といえば、ロッキーとかの観客も興奮するスピード感溢れるものとか、

あるいはシリアスな涙が溢れるチャンプとか、どうしてもアメリカ産やあるいはアイル

ランド問題を扱ったものとかが思い出されるが、日本もある程度、昔から作られていた。

特に日活映画では、無国籍アクションが主流だから、色々な人がボクサー役をしていた

といっても、生まれていないでは見る機会もないが、それが今回BSでそんな映画を見る

機会があった。監督が鈴木清順で、主演が和田浩二の「百万弗を叩き出せ」である。



百万


六十一年公開作のものだが、勿論よーつべに投稿はないし、販売もされていないように思う。

これを見たのだって偶然で、テレビを点けたらやっていたで、見たというあまり褒められた鑑賞

ではない。

物語は小さな島を出た主人公が、都会で一旗上げるのにボクシングを選び、大手のジムでは

相手にされないので弱小のジムに拾われて、そこのトレーナーと栄光を掴むための努力をし、

徐々にプロボクサーとして頭角を現し、やがて日本チャンピオンに挑戦するまでになるが、

弱小ジムでは興行も打てず、主人公は移籍してしまう。

ただ恩を忘れることはなく、自分のファイトマネーを弱小ジムの再建にと・・・。

これを巧い具合に映像化すれば、それなりに見ていられるのだが、何ともだるい。

それはボクシングの練習風景も何も、明らかに素人のシャドーやスパーリングを見せられて、こ

りゃボクシング映画を撮りたいのでなく、新人売り出しのためだけの映画、いやあるいはボクシング

指導とか、そういった金を惜しんだか、笑いが起きてしまう動作である。

もっとも当時は興行とヤクザものが接いだから、ヤクザ者がやっているジムなんてものも出てくる。

そして弱小ジム、名を原口ジムで古い京急電車が出てくるのだから、この金子信雄が演じるトレーナー

のモデルはあの「拳聖」と呼ばれたピストン堀口なんだろうなぁと考えながら見ていれば、この後年

悪役のそれも大概小ずるい悪役で簡単にやられるとか、それとも憎悪される陰険な性格の役ばかり

の人が、熱血漢トレーナーを演じているのが微笑ましい。

そして主人公よりも先にいた有力選手も引き抜かれて、その有力選手と主人公のタイトル・マッチが

クライマックスに据えられて、そこへと色々な物語をはさみ、続いていく。

半分以上はだれてしまう展開、ただ役者の高笑い、それも意味のない高笑いが何とも古さを感じさせ

そしてタイトル・マッチのしょぼさは、大笑いの種になりそうなもの。

それでも展開上優劣が二転三転し、最終的にトレーナーに教えられた右アッパーが炸裂して、チャン

ピオンになる、そしてトレーナーと喜びを分かち合い、再び二人でその先を目指すことになるで、めでたし

めでたし・・・、と、あの当時ではこんな程度がボクシングだと・・・。

まぁ鈴木清順は映画が終ってからのクレジットで知ったのだが、こんなしょうもない映画の監督していた

のかという感想に落ち着いた。

何ら盛り上がらず、またボクシングの緊迫感もなく、動作は陳腐で「お笑い」・・・。

せめてボクシング映画なら、スタイルとか試合場面はもう少し演技をそれらしくしてもらえないと・・・。

ただピストン堀口が酒によって電車に跳ねられて亡くなっているのだが、このトレーナーも酒に酔って

千鳥足のシーンでは、こうやって線路に入ってしまって、なんて思ったりと、ノスタルジィー的癒しとしては

昔の日活映画は、こういったものを量産していたんだろうなぁ、と、作品の良し悪しよりは古き良き時代の

息吹きを感じるだけで良しとしよう。



カム


で、日本のボクシング映画で言えば、この「カムバック」もガッツ石松の熱意だけで作られたもの。

上の作品よりは、ボクシング自体は元々プロだから、そこのシーンはある程度見ていられるだけで

物語自体はまったく平凡・・・。




こちらは詩人の寺山修司が監督した作品だが、自分の夢をあきらめ切れない老ボクサーと

新鋭との二人三脚の物語で、取り立てて見所もない。

まぁ、寺山の人生観は描かれているから、そういったところが気に入っている人にはいい映画

かも知れないが、ここでも主人公は清水健太郎でボクサーとしての鋭さは感じられない。


それと現役のボクサーが主演した映画ってのもあった。

なぜに題名が「ウェルター」なのか不思議だったが、主演を演じたのが福田健吾というボクサー

でその当時持て囃されていたらしい。

こちらも少年院でのボクシングが矯正教育にいい、って、まるで「あしたのジョー」で、少年院から

インター杯にってな物語だったように思う。

もう忘れるくらいだから、それなりの映画だったのだろう。

http://jp.youtube.com/watch?v=jgUyeXCob-A

「日本フェザー級タイトルマッチ、淺川誠二対福田健吾」


何の動画もないのは寂しいので、福田健吾のやつがあったのでそれをリンク。

対戦相手の浅川誠二の応援には何ともその当時若かったお笑いの人が出てくる。



naoto

で、この他にも「どついたるねん」等の映画もあるのだが、今ひとつ日本での映画には

心に響くというボクシング映画は、残念ながらない。

それよりは画像を貼り付けた高橋ナオトのボクシングは、そのファイト・スタイルも心に

響くし、何より対戦相手がいい。

出来れば、こういったボクサーを題材にして映画を撮ってもらいたいものだ。


http://jp.youtube.com/watch?v=iVMUZp-Egks&mode=related&search =

「高橋ナオト対マーク堀越、日本ジュニア・フェザー級タイトルマッチ」その一


http://jp.youtube.com/watch?v=M_8gSvGBBUY&mode=related&search =

「高橋ナオト対マーク堀越、日本ジュニア・フェザー級タイトルマッチ」その二


http://jp.youtube.com/watch?v=4bmkZsxUbTg

「高橋ナオト対マーク堀越、日本ジュニア・フェザー級タイトルマッチ」その三


「はじめの一歩」の宮田一郎のモデルとされる高橋ナオトと、ジェーイソン・オズマ

のモデルではないかのマーク堀越の反則もなく戦う姿は、清清しい・・・。



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Amazon.co.jp       この構図「がんばれ元気」かと、思ったもの。
                                といったところで、またのお越しを・・・。