古典特撮の息吹きを今に伝える「キング・スパイダー」 | 流浪の民の囁き

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映画を通した過去・現在・未来について、なぐり書き

アルバトロス ・フィルムという配給会社がある。

ここの戦略は、他の配給会社が見向きもしないものでも、値段によっては買い付け、

公開をちらっとしたら販売によって元を取る。

今の映画業界のセオリーを踏襲し、「案山子男」というホラーなんだか分からぬもの

から一部には熱烈なファンが誕生し、結構な商売をしている。

要するに固定的なB級ファンには堪らない作品を頻繁に売り出している。

この映画も、昔懐かしいミニチュア特撮手法が満載の、画面を笑顔で見詰めながら

ほのぼのとしたパニックを愉しむという、ある種エンタテイメント性に優れたもの・・・。



キング



http://jp.youtube.com/watch?v=3k2uXTYPk5Y&NR=1

「キング・スパイダー」  〇三年公開作


ハリウッドにケンカを売ったという物凄い文字が惹き付ける。

そう巨大蜘蛛に壊滅されるのは映画の都ハリウッドで、「犠牲が出ます」「いい、どうせハリウッドだ」

のセリフは痛快だし、何よりこのミニチュアの特撮手法は、うそ臭いコンピューターなどより手作り感

がありありで微笑ましい。

まぁ、コンピューター全盛のハリウッド映画にミニチュアを使ったところに対抗意識が叫ばせたセリフ

だが、爽快にぶっ壊す心意気はいい。

と、内容は生物兵器開発の手違いと、ここらはどうでもとってつけたもので、メインは勿論、ミニチュア

の町を蜘蛛がただただぶっ壊す、と喝采を上げるノスタルジィー組、映画はいやモンスターはリアルで

なくこういったものでなくては・・・。

と、懐古趣味がはまれば、こんな楽しい映画はないし、笑いが取れるものには、一時の癒しだ。

作っている方でもパニックがなんたらよりは、ただただぶっ壊す爽快感を味わうためにだけミニチュアを

作り上げる・・・。ここらが文明批判ってな深読みはしてはいけない。

空恐ろしいエンターティメントはスクリーンでなく、小さなブラウン管でも楽しめる娯楽だ。

にしてもアルバトロス・・・、やるよなぁ・・・。

こんなしょうもない映画を買い付けて・・・。でも作った連中はスポンサーもなく、それでも東宝特撮にはま

り金の工面して、脚本は「バタリアン」あたりをアイデア、いやパクって、後は野となれってなところで最後は

原爆までかましてって、スクラップ・アンド・ビルドが経済の鉄則であるってな、含みは全くなくまたは軍隊と

は国民を守らないってな左翼の言い分を体言しているわけでなく、製作者の趣味・・・。

そう趣味の延長が映画になって、ごろりと寝転がり「馬鹿やってんなぁ」という見る人の嘲笑を想像して、

一人悦にいる・・・、いいねぇこういった作品の後は、製作者の思惑も想像させる余裕が出てくる。


キング2


http://jp.youtube.com/watch?v=FPEZ4V4AwV0

「キングスパイダー対メカデストラクター」 〇五年販売


上の続編で、今度はラスベガスを壊滅させるという再び、爽快なぶっ壊しがメインだが、

いつまでも対抗出来ない人間ではいけないと、ゴジラ対メカゴジラでもないだろうが、

ゾイドとメカゴジラをかさね合わせたロボット登場と、前作よりミニチュアに力を入れて

対決シーンでは、やはりコンピューター合成も多用して、ぶっ壊しに邁進する。

何より力を入れたロボットと蜘蛛のバトルはほっといて、軍隊はどんどん建物を破壊し

ていく、ここらは不動産屋にでも依頼されたかの、それともラスベガスである不採算の

カジノが保険を目当てにして、いややはりスクラップ・アンド・ビルトの経済鉄則が横たわり

にしても予算を多少膨らませて作ったものだろうが、あの「松竹映画」の特撮並に寸尺が

合わないのは、やはりフィルムの使いまわしに原因が・・・。

って、ほとんどそれなのだが、そういった製作者の予算までも映画を見ながら想像出来るって

やはり空恐ろしいエンターティメントだ。

で、蜘蛛でやはり巨大化するハリボテをリヤカーに乗せて引っ張る・・・。

って、ちらっとお色気を滲ませながらってな映画を思い出した。




スパイダー

http://jp.youtube.com/watch?v=Bksvon-hSDM&feature=related

「ジャイアント・スパイダー大来襲」 七十七年公開作


こちらは年代からも予算が限られているから、それなりの大道具を作って村人のパニックを

演出して・・・、それにしても逃げ惑う人々ってな設定で、蜘蛛を引っ張るってのにはいささか

それぐらい人を用意して、押してやれよ・・・。

蜘蛛はあたらでは好まれる昆虫なのか、それとも忌み嫌われるからか、この手の映画が多い

ように感じる。

ただパニック映画を低予算で作るには、やはり特撮のアイデアを知恵を絞って、自分達の精一

杯の映像化と見なしてやれば、「苦労したんだねぇ」という、哀れみも生まれてくる。

馬鹿にされようが、何されようが「映画が好き」ってな心持ちなら、どんなものでもそれなりに

見てやらないと・・・、誰かに見せたくて作るんだろうから・・・。

という博愛主義に観客を陥らせる出来の映画・・・。

それを三十年経っても行なっている人々を日本に紹介するアルバトロスも、また映画が好き

いやいや市場調査すれば、きっとこういうダメ映画に対する需要はある程度あるのを知っている

のではないか・・・。


キングスパイダー
¥1,231
Amazon.co.jp                     といったところで、またのお越しを・・・。