ポール・ニューマンが亡くなった。
正義感溢れる二枚目でなく、どこか捻くれて底辺にいる人間を演じさせると、
とてもその魅力を発揮する。
泥臭さがとても似合う俳優で、それらの系統の映画はどれもヒットしたように思う。
その中でも、六十九年の「明日に向かって撃て」は、演出の妙もあり、名作と言っ
ていい出来の映画だった。
そしてそれ以前の賭け事みたいな生き方に滲む、背後の重さを感じさせる作品も
忘れられないものとなった。
ただ売れた後は「タワーリング・インフェルノ」みたいに、魅力半減の作品も含まれ
てしまうが・・・。
http://www.youtube.com/watch?v=0zOeYH2mQSM&mode=related&search =
「明日に向かって撃て」 六十九年公開作
アンチ・ヒーローの列車強盗団の活躍する物語である。
その世間的には極悪人が、生き生きと犯罪をこなし犯行時以外はのん
べんだらりと平安な暮らしを過ごす活写は、犯罪の重大性も悲壮感もない
いい意味での鈍感な精神に、恋人までもそれも教師が罪悪感を引きづらず
に付いていく羽のような軽い行動力を芸達者のポール・ニューマン、ロバート
・レッドフォード、キャサリン・ロスが演じている。
またここでも音楽が、映像の重さを相当に軽くして、犯罪者が戯れるシーンで
は、綺麗で微笑ましい人間に仕立て上げている。
ここらにも当時、ベトナムという病める存在があるアメリカン・ニューシネマの勧善
懲悪」的進行への反発が、反転が伺える。
で、作品の評価は良かったが、アカデミー賞は逃している。
これもアンチ・ヒーローの犯罪者礼賛みたいなものへの反発もあるだろうし、ラスト
シーンの官憲に強制的終了がストップ・モーションであっても、少し受け入れられ
ないものだったのかも・・・。
ただこの映画が公開されて以降、西部劇と限らずジョン・ウェインに代表される勧善
懲悪的映画は減っていき、個人の苦悩やアンチ・ヒーローものが幅を利かすことに
なっていく、これと「俺達に明日はない」は史実の物語の再現である点も・・・。
もっとも時が過ぎればゆり戻しも起こり「ヒーロー」はそのまま原寸大の人間となって
甦って、それらが脚光を浴びる近頃だ。
日本でもそのもずばりの「ヒーロー」という、検事が主役の映画まで出来るようになった。
これが以前であれば、検事とは冷淡で人間味のない存在として扱われることが多かった
のを、血の通った人間として魅力的に描いている。
まぁ、そのままヒーローだな・・・、言うことない。
http://jp.youtube.com/watch?v=cF1Jjyvec2E
「ハスラー」 六十一年公開作
賭けビリヤードに生きる一匹狼の生き様を見事に演じていて、ギャンブルに
駆け引きはつきものと、モノクロの映像がゲームの醍醐味を良く描いていた。
ポールの風貌が良くギャンブラーという「明日のない今日を生きる」男を体現
して、厳しさも漂わせた駆け引きの世界を、また男にとっての勝負と言う点も
この男が演じると、ぴったり来るのはキャラクターの良さでは・・・。
で、この頃の表情が似ていると思うのが、リチャード・ドレフィスでドレフィスの
映画を見るたび、ポールが被さっていた・・・。
http://jp.youtube.com/watch?v=JBvyB2dTnlQ&feature=related
「ハスラーニ」
続編と入っても二十五年後になっていて、主人公の男も年をとり、弟子になる
トム・クルーズにテクニックを教え込むが、いつしか勝負師の魂に火がついて
昔の闘争心を思い出すが、あの頃のインチキまがいの駆け引きでなく・・・。
と監督が監督だけに、初老の男の物悲しさも見事に映像化して見せていた。
http://www.youtube.com/watch?v=Twi_BRP7kXk
「傷だらけの栄光」 五十六年公開作
監督ロバート・ワイズ、主演ポール・ニューマンの
傑作ボクシング映画である。
あのスタローンの「ロッキー」もこれをとても参考にした
感じは映像の端々に出ていた。
「ロッキー・マルシアーノ」あるいは「グラチアーノ」、世界
ミドル級チャンピオンの伝記である。
ニユーヨークの貧民窟の暴れん坊が、ボクシングという
スポーツで栄光を納めるまでの物語。
白黒の画面が、ボクシング・シーンには合っている。
ちなみに主人公の予定は「ジェームス・ティーン」であった
のだが、不慮の交通事故で亡くなり、ニューマンにお鉢が
回ってきた。で、ニューマンはこの一作でアメリカを代表する
スターとなった。ここらは分からないものだ・・・。
記録媒体に残る姿は、いつまでも鮮明で輝かしい記録として
残っていく・・・。
- 暴力脱獄
- ¥1,890 ご冥福を・・・。