過ぎ去り夏、ひとかけらの哀愁・・・ | 流浪の民の囁き

流浪の民の囁き

映画を通した過去・現在・未来について、なぐり書き

夏の思い出・・・、青年期の夏休みでの出会いや出来事を、過ぎ去ってから

振り返る時、痛みや自省・哀愁に包まれる一時も、また青年の成長の傷・・・。

秋の匂いが立ち込め始めると、つい思い出すのは「夏の輝いていた自分や、

出会い・・・」その反面、儚く消えてしまった恋の追憶・・・。

ティーン・エイジャーが主役になれる夏は、ともすると痛みやほろ苦い思いの

映画となって、共感を呼ぶ・・・。

「秋のささやき」を聞きながら、懐古する一時も、また・・・。




去年の夏

「去年の夏」 六十九年公開作


この映画の監督は「泳ぐ人」のフランク・ペリーで、避暑地に集まった若者の

それも対象的な女の子、二人にを立てて、容姿端麗なれど傲慢な女の子に

振り回される男二人と、全く優等生の学級委員が似合うさえない女の子の四

人が織り成す、夏の日の哀しい一瞬の過ちと、過ぎ去っていく夏の、いや新学

期に向けての、ほろ苦い懺悔の気持ちを丁寧に描いていた。

で、以前掲載したものがあったので、再掲載。


この「去年の夏」の原作者は、エバン・ハンター別名をエド・マクベイン
「八十七分署」というアメリカの連続ドラマで有名な人である。
また「暴力教室」の原作者でもある。
使い分けをしているのだが、エバン・ハンター名でヒッチコックの「鳥」
の脚本も書いていたと、まさに多彩な男の青春ドラマが「去年の夏」である。
この映画はありがちな夏の過ちの、青春の痛みがテーマである。
女王様気分の娘とそれに惹かれる男二人、そして生真面目で友達もなかなか
出来ないさえない娘の男女四人の、避暑地での物語。
たぶんに女王様気分の娘は、やはりというか気分屋で我が侭、配役はそれな
りに顔に性格が表れるような娘を選んでいる。
そしてさえないが心優しい娘、キャシーバーンズという女優がやっているの
だが、これが原作にぴったりの女の子だし、演技が秀逸だ。
だけにこの年、六十九年のアカデミー助演女優賞にデビュー映画でノミネート
された。(もっとも獲ったのはゴールデン・ホーン「サボテンの花」だった)
もう三、四十年前の作品なのだが、若い時の行動は普遍なのか、ここでもやっ
かみ、そして嫉妬、いじめと現代でもある事象が行われる。
最後はこのさえない娘がレイプされて悲しい結末となるのだが、それをとめら
れなかった男の不甲斐無さと虚しさ、嗾ける高慢ちきな娘、そして実行犯の男
の省みない性根と、なかなかに人物像を描いていて、共感出来る・・・。
夏の思い出の一ページなのだが、さてこのさえない娘はそれで済むだろうか?、
無理だわな、何しろレイプの現実があるって感情移入のし過ぎか・・。
そんなだからこのレイプをする男が「いちご白書」の主役には、一度は馴染め
なかったものだ。
役柄とはいえ、見ている方はイメージが出来上がるからなぁ・・。
ただこの男、ブルース・ディビソンもこの映画がデビューでこれがお眼鏡適い
主役を射止めているのだから、この映画の出来も良かったのだろう。
この後、ブルースは「ウィラード」というネズミとお友達の根暗な青年を演じ
ている。




さらば夏の日

「さらば夏の日」  七十年公開作


こちらも夏休みの避暑地だか、舞台はフランス、でどうしてもフランスの伝統なのだろうか

ヨットに医師とか、世間一般から遊離しいた感じの主人公たちが避暑地で出会う、性悪女

に翻弄され、恋人との関係が脆くも崩れ、「ひと夏の経験」から、主人公の医師はことの重

大さに気づき・・・、って、ベタな展開で、フランスならではの「好いた離れた、そしてまたくっ

付いた」で、そこにフランシス・レイの音楽で、単なる男の浮気の出来事が、一編の恋愛に

昇華してしまった。

まぁ、下の個人教授で売れたからの「柳の下のドジョウ」的映画に、邦題が過大な題名を

当てはめるから、流石によーつべにも投稿されていない。

ただ音楽は、乗っている時のもので、しみじみとした情景が目を閉じると浮かんでくる。

流石なつくりだった。


http://www.youtube.com/watch?v=c7tr8A6lmVQ&feature=related

「個人教授」 六十八年公開作


こちらの邦題は、年上の女対若者という、「お姉さんは好きですか」のパターンで、恋焦がれる

若者のその心情が、観客にアピールしヒットしたもの。

相手役の年上女をナタリー・ドロンが演じて・・・。

しかしどうも、見ていてこのナタリーのキャラクターが好きになれず、「どうして、こんな女を・・」

と、若者の苦悩や切ない気持ちは理解出来るのだが、対象者として今一、気持ちが乗らなかった。

どこかナタリーの表情というか演技に、マネキン的無表情がでるともう・・・。

ただ音楽がそれらをうまくカバーしていた。





おもいでの夏


http://www.youtube.com/watch?v=2Is1GNmm9_Y&feature=related

「おもいでの夏」  七十一年公開作


思春期の男の子の、初体験物語では、上の個人教授よりは清清しい気持ちに

こちらの方がなるのは、やはりフランスのどこか崩れたナタリー・ドロンよりも、

アメリカのジェニファー・オニールのその立ち居振舞いに気品を感じてしまうから

かもしれない。

そして十五歳の男の子のおどおどした態度とか、年上の女性に対する憧れとか

とてもそれらがすんなりと映像となっているから、とても印象深い。

勿論そこには音楽の果たす役割が大きく、このミッシェル・ルグランの哀愁を帯びた

曲がバックに流れれば、ともするとベタな展開も、感傷的面持ちにさせてくれる。

そして上の映画と少しばかり違って、ひと夏の経験と、その後の振る舞いが、すんなり

受け入れられ、どちらにも肩入れできるセリフを、まぶして・・・。

「私は実家に帰ります。昨夜のことは弁解しません。時がたてばあなたも分かるでしょう。

あなたの思い出にとどめ、幸せになってください」としるされていた。

やがて大人になったハーミーは、こう述懐する。

「その後の彼女のことは何も知らない。人生のささやかな出会いだった。人は何かを得て

何かを失う。その時、私は幼い私を永遠に失った」……。


年上にとっては、単なる過ちで、諭すような・・・。

そして若者はひと夏の経験が、大人への扉と・・・。

どちらにしても、こあいった恋愛映画にとって、印象に残るにはバックの音楽の出来に

懸かっているを認識させる・・・。

にしても、純情という言葉が似合う若者が昔は多かった・・・。

おもいでの夏
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