女性の活躍が目立ったオリンピックでは、連日報じられるのは「女性は凄い」で統一され
それに伴って不甲斐ない男性との続きが取られると、なんだか肩身の狭い思いも感じるが
その昔、騎士道精神の華やかし頃、剣の腕も立つが、詩も読み正義感に燃え、真に男らしい
男が存在し、ストイックに好きな女性に献身的に尽くし、自分の心を隠したまま息を引き取ると
いう、男が見ても惚れ惚れする精神を持った男を主人公にしたのがフランスの「シラノ・ド・ベル
ジュラック」で、この男の行動は沢山の共感を得て、今でも語り継がれる・・・。
その風貌で、鼻がほんの少し低ければ、このようなストイックな行動をしたかは、解らないが・・・。
http://jp.youtube.com/watch?v=HFIe995kJQc
「シラノ・ド・ベルジュラック」 九十年公開作
騎士道華やかし頃、異様に高い鼻にコンプレックを持つ男の秘めた思慕の相手は、
それに気づくことなく、あろうことか自分の意中の人との取り成しを相談する。
ここらに「美醜」の悲劇があり、主人公のシラノはその相手に伝え、戦場にあっては
詩人としての才能を発揮し、名文を愛しのロクサーヌに送り続ける。
勿論、ロクサーヌの意中の人の名を語って・・・。
通信手段のない時代の良さが心地よく、手紙の名文に酔わされる女性と、自分の意
思を込めた文章を綴る男の純情・・・。
恋においての「片想い」の心情と、献身的な見返りを求めない行動には、三世紀も経
ていても、その自己犠牲の精神は普遍で、観客はいつしか鼻の高い表情に、内面の
ハンサムさを見て、シラノに親近感を抱き、より好意的な心情になってくる。
ここで作者は、主人公の不憫さにラストシーンは、瀕死のシラノに自分で作った名文
を言わせ、これまでの出来事をロクサーヌに気づかせて、その胸で息を引き取らせる。
と、より印象深い感銘で、映画を閉じるものだが、そのラストについて、フランスとアメリ
カでは、この物語を現代に置き換え違ったものを用意して映像にしたのが「愛しのロク
サーヌ」である。
http://jp.youtube.com/watch?v=XPPV0WE6KQ8&feature=related
「愛しのロクサーヌ」 八十七年公開作
スティーブ・マーチンのシラノに対して、ダリル・ハンナのロクサーヌの配役で
消防所長と天文学者との関係にしたものであるが、そこはやたらコメディーと
して笑いを用意しているものであるが、フランスの「シラノ・ド・ベルジュラック」
の悲劇的な結末と違って、アメリカでの笑いには「ハッピー・エンド」の方が似
合って、観客も「良かった、良かった」でハッピーと、コメディーの王道に、この
物語を当てはめていた。
http://jp.youtube.com/watch?v=WSK-cC2WeVk
「無法松の一生」 五十八年公開作
そしてこの「シラノ」の献身的男の純情といえば、日本では「無法松の一生」
となるであろう。
こちらは学もなく粗野で暴れん坊でありながら、恩義や自己犠牲や、そして
やたらめったらの思いやりが、画面に踊っていた。
この三船敏郎ものもリメイクだが、暴れ太鼓のシーンは坂東妻三郎ものより
溌剌として迫力があった。
こちらはフランス・アメリカと違って、最後まで「片想い」を貫き、より日本的自
己犠牲の素晴らしさを観客に訴えていた。
これもラスト・シーンは印象的で、あの「生きる」のものと双璧をなす・・・。
とまぁ、女性が強くなり、男性が不甲斐なくなりの現代では、逆転した物語もち
らほら現れて・・・。
ただ昔も今も、実際、女性は母となり自己犠牲で「立派な人間」を作るのである
から、何も特別取り上げずとも当然・・・。
ではない「世の中」は嘆かわしいかな、現実である。
- シラノ・ド・ベルジュラック 【VHS/字幕スーパー】
- ¥1,029 といったところで、またのお越しを・・・。