日本の恐怖映画で、イギリス・ハマーを始めとしてスリラー・ホラーの影響から脱却して、
よりオリジナル的映画となれば、ここらの同化してしまう「マタンゴ」や宇宙生物「ゴケミドロ」
の寄生となってくるのだろう・・・。
http://jp.youtube.com/watch?v=wai2aotTmyo
「マタンゴ」 六十三年公開作
難破した船が着いた南海の孤島には食料がなく、「禁断の菌類」しかない。
そしてそれを食すれば、キノコ人間「マタンゴ」となってしまう・・・。
最初こそ結束力を誇った仲間も、食料という究極の欲求には抗しきれず、
次々、「ベニテングタケ」みたいなオドロオドロしたキノコを口に運んでしまう
そしてキノコ人間になったものは、仲間を引きずり込む。
同化してしまった者にとって、同化しない者は異物であり、同じ認識をもち得
ない異端児扱い・・・、ここらがとても面白い。
キノコを介して、異物になってしまった者が、異物にならないものを引き込む。
まぁ、その映像も恐ろしげな化け物となっているが、それ以上に恐ろしいのは
同じ思考に基づかない価値観は、異端でありここで仲良く暮らすには、同化
しなければならない。
そしてからくも日本に逃げ帰った者も、その胞子の威力は凄まじく、皮膚が「マ
タンコ」で冒されていた・・・。
とまぁ、暗に化け物の映画なのに、捻くれていると同化という精神性をグロテスク
に表現すると、こういったおどろおどろしい形に生まれ変わる・・・。
年代的に「転向」なる言葉も、そちらの人々に使われだした頃と見れば、東宝の
労働争議を彷彿とさせて、にやけてくる。
http://jp.youtube.com/watch?v=iSTi4gGV4e0&NR=1
「吸血鬼ゴケミドロ」 六十八年公開作
こちらは「ブロブ」と同じスライム状の宇宙生物が、日本では人間に寄生して「吸血鬼」と
なり、次々に人間を襲い始め、日本人を根絶やしにするかのように、犠牲者は増えていく・・・。
この寄生させられる主人公のキャラクターが、この映画の印象をより際立たせ、また共演の
一癖あるキャラクター達の言動が、人間不信を醸し出して、「いざ鎌倉」みたいな結束力は
全くなく、「くもの糸」状態で、この映画のテーマには合致している。
だけに寄生された人間をやっつけても、それを察知した生物は、違った人間に素早く移って
血を求めて・・・。
松竹・東映と東宝の「マタンゴ」とは違ったテイストを醸し出して、吸血鬼とスライムを合体させ
れば、面白いものが出来るとでも思ったのか、陰惨な映画に仕上がっている。
もっともこれを真剣に見ることなく、斜め見をすれば、コメディ・タッチの飽きないお笑いで、ずっ
と笑っていられるから、この頃の程度の低いお笑いに飽きた人には、断然お勧め。
特に金子信雄のキャラは、東映任侠でも遺憾なく発揮されたままだから、大笑い請け合いの
熱演である。
とまぁ、同化に寄生という主題で、この二本を見てみれば、よってたかってマインド・コントロール
させれば同化も進むし、また自分は寄生して生き延びるには、人をあやめなれば生きていけない
あるいは、寄生体を変えなければならない・・・。
この頃の映画人は、ある程度の思惑を根底にして映画に忍び込ませている。
という見方をすると、同化という人民浄化や、自立できない者にとって寄生し続けるのは、いたって
普通のことなのである・・・。
と、それぞれの得意な民族を思い浮かべると、映画のストーリーもけだし笑える要素を多分に含ん
でいる。
まぁ、そんな斜め見するのは、私ぐらいだと思うが・・・。
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- 吸血鬼ゴケミドロ
- ¥3,591 といったところで、またのお越しを・・・。