独りでも戦い続ける「マーフィの戦い」 | 流浪の民の囁き

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映画を通した過去・現在・未来について、なぐり書き

ジョン・バリー繋がりで、なかなか秀逸なものとなれば、このピーター・オトゥールの

「アラビアのロレンス」を彷彿とさせる映画が、真っ先に浮かんだ。

たった一人で憎っきドイツのUに果敢に戦いを挑むイギリス兵という、ありえない設定

だが、そこには自分の僚友を殺された、そしてたった一人生き残った男の贖罪意識が

無謀な戦いに没頭されていく、ある意味権力に立ち向かう弱き人の決死の戦いという

側面を捉えているので、やたら狂気に陥っても共感出来る部分がある。




マーフィ

http://jp.youtube.com/watch?v=e2Ta85RIWN0

「マーフィの戦い」  八十一年公開作


ピーター・オトゥールの演技も見ものなのだが、ここでは「アラビアのロレンス」よりも

何よりも水上複葉機やオンボロ船と潜水艦というアイテムの方に目が行く。

特に複葉機のなれない操縦にひんやりしたり、大空を舞う姿にはやはり近代的武器

としての飛行機の鋭角なフォルムでないのんびりした雄姿と艶やかな飛行姿を見て

いるだけでも、楽しめるしその上、対峙するのが潜水艦、それもUボートというこれま

たその姿を見てるだけでも映画を見た価値がある。

その上、ピーターの役柄は整備兵であり、オンボロだろうがなんだろうが修理してしまう

という、戦闘のための兵でなく後方支援が任務の兵でも、敵に対峙すればという、戦争

時のメンタリティーも着実に描いている。

そして、小型爆弾を巧く命中させたと思い込んだピーターが意気揚揚と帰ってみれば、

島は無残な姿に報復されていて、よりピーターの気持ちを激昂させる。

そんなメンタルの部分も、それまでに潜水艦に沈められた僚船の生き残りとしての、復

讐に燃える気骨と瀕死の重傷から甦りつつある上官が再び、残酷に殺されてと描いて、

観客も感情移入しやすい・・・。

さすれば主人公の復讐心は更に燃え上がり、戦争終結を知らされても、一切合切関係

なくあるのはUボートに対する怨念の強さ・・・。

ここらへんは流石にピーターの演技には、いくら狂気じみていても声援を送りたくなる。

やはり独りでのその心意気は、現在の人々のなくして行った精神性に通じる。

へんな例だが、あの秋葉原の事件も独りだからこそ、変な感情移入をする人も出てくる。

もしあれが、集団であったら、百パーセント非難の嵐であったろうと思う。

まぁ、とても同列に考えるのは、如何なものかとは思うが・・・。

結局、ついていけない人々は、ピーターから離れていくのだが、それでも・・・。

もっとも、脚本は仕舞いをちゃんと綺麗な方で用意していた。

クレーン船での体当たりでも、潜水艦は海底に潜るが、そこで低泥に埋まってしまうという

そこに海岸に打ち上げられた魚雷を発見したピーターは、それをクレーンで落下させる。

流石に潜水艦もそれで大爆破、そのあおりでクレーン船も船体が壊れ、クレーンに挟まれ

てしまったピーターもろとも、海に沈んでいった・・・。

という、エンディングは狂気に満ちた戦争の無意味さを印象付けている。

あれで生き残ったら、さて今後、どうやって生きていく?・・・。

脚本も演技者も監督も良いとなれば、この少しばかり登場人物の少ない地味目の映画も

とんと印象深くなる。もっともそれはバックの音楽もしかりだし、カメラワークの良さも・・・。


アラビアのロレンス/ピーター・オトゥール
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Amazon.co.jp                といったところで、またのお越しを・・・。