南アフリカの覇権に待ったをかけた「ズールの戦い」 | 流浪の民の囁き

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映画を通した過去・現在・未来について、なぐり書き

この映画も音楽をジョン・バリーが担当している。

そしてこの作品は史実に基づいた、砦を守る少人数に対して、大多数での一斉攻撃

という、アメリカで言えば「アラモ」の攻防と同じ展開だが、そこは銃器の均衡はあった

「アラモ」と違い、銃器対槍・弓の古代と近代の争いの様相・・・。



ズール

http://jp.youtube.com/watch?v=1csr0dxalpI&feature=related

「ズール戦争」 六十四年公開作

こちらの映画は画像の様子とは違い、イギリス兵百五十人で守る砦に、ズール族

四千人が攻撃を仕掛けてくるという植民地政策の歪みに、奮起するアフリカ先住民

の怒りがむいたものだが、視点は守る方のイギリスになって二日間の攻防を丁寧に

描いている。

この映画、一方的に孤立するイギリス軍のさまざまな兵の動向を描くことで、苦境に

陥っている者の、壮絶な抵抗と壊滅するかの絶望感が映像を覆っているから、どうし

ても観客は古代のままのズール族のいでたちもあって、イギリス兵に肩入れしてしまう。

だが、ことは植民地としての覇権主義と古来からの土地を荒らされることへの反発との

激突であるから、戦いのあり方は善悪はない。

しかし描き方一つで、見ている人は違った思いを抱くこととなる。

だからこれもその類いを避けられず、滅ぼされるイギリス軍と映ってしまう。

実際は植民地に出張ってきたプロの戦争屋対これまで戦いとは踊りの延長のような鼓舞

で済ましていた民族では、人数の問題も均衡してしまっていることになる。

続々押しかけるズール族が、今でいうゾンビの如くほとんど無抵抗でどんどん倒されてい

くのは、西洋の野蛮な殺生能力を持つものと、そうでないどちらかといえばテリトリーを守り

静かに暮らす人々の文明というものへの考え方の違いが、侵略を容易なものにしている。

と、その昔の西洋の野蛮で残虐な裏を見せ付けられているとも取れる。

ましてどんどん減っていく兵の踏ん張りに、ズール族が突然、攻撃を止め奮闘に敬意を

表す場面など、「ご都合主義」と見てしまう。

ただ、戦いもスポーツマン・シップ精神を発揮となれば・・・。

そうも考えられるが、やはり少しばかり違和感は拭えない。




http://jp.youtube.com/watch?v=1YFLoIjQ4-0

「シャカ・ズール」  八十九年放映
こちらは題名も示すように、ズール族の長に視点を当て描いたテレビ・ムービーである。

それも部族間のこれまでの「ごっこ」に風穴を開け、戦闘とは「死」か「生」であるの、それま

での部族における価値観を根底から崩し、より強いものが他者の侵略を防ぐ力になる。

と、激烈な精神性を叩き込んでいく。

そのカリスマで部族をまとめ、この人物が死ぬまでは侵攻を食い止めた。

部族の英雄と称えられる・・・。

アメリカのベトナム戦争以後の風潮が、アフリカからの黒人の歴史に敏感になれば、こうい

った作品も製作される。

これこそが時代の変化なのだろう・・・。もっともあの「ソルジャー・ブルー」のような残虐性を

まさか茶の間でではないので、そこは部族間の対立とか、黒人同士の諍いに視点が当てら

れている。


ズール002

http://jp.youtube.com/watch?v=FQPVpLq8PBk&feature=related

「ズール大政争」  〇一年放映 DVD販売

こちらは六十四年版のリメイクみたいなつくりだが、残念ながら両方を巧く描こうとして何とも

ちぐはぐな演出に終始し、邦題の「大戦争」が眉唾と呼ばれるくらい、拍子抜けする出来で、

シャカ・ズールの王妃に、名の売れた歌手が出ているくらいで、主役を「シャカ・ズール」と同じ

人物が演じているので、なんだか「シャカ・ズール」の続編かと思ってしまう。

にしても、お話し中心や人物の描写に集中されると、飽きてきてしまう・・・。

これであれば、やはり「ズール戦争」の方が、映画としての出来はいい結果である。


ズール戦争 スペシャル・コレクターズ・エディション
¥3,761                    といったところで、またのお越しを・・・。