猟奇的事件で思い出すのは、やはりレクター「羊たちの沈黙」「ハンニバル」 | 流浪の民の囁き

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映画を通した過去・現在・未来について、なぐり書き

マンション女性行方不明事件が、一転して猟奇的処分が話題になり、ニュース掲示板に

躍る「食人説」を見れば、反射的に思い出すはレクター・ハンニバル、アンソニー・ホプキンス

のそれこそ鬼気迫るはまり役の「羊たちの沈黙」だ。



ひつじ


http://www.youtube.com/watch?v=ZWCAf-xLV2k

「羊たちの沈黙」  九十一年公開作

この映画での猟奇殺人は、「人間の皮剥ぎ」を専門とする殺人鬼。

それを追う優秀な女性新米捜査官と投獄されている天才精神外科医と

の密室でのやり取りが、そしてその外科医は「食人」という設定なのだが、

「エレファントマン」の善良な外科医役とは、それこそ百八十度違っている

レクターをアンソニー・ホプキンスがその風貌に狂気を滲ませ、強烈な印象を

観客に沁み込ませていた。

だけにジョディ・フォスター演じるクラリスが、より異常な狂気を秘め人物に対峙

する弱々しい女性と映り、観客はこちらに感情移入していく。

それがだんだんレクターの正確な分析力とかが発揮され始めると、この二人に対

しての心情をなんとなく理解し始め、サイコ・サスペンスの範疇を飛び越え、心理劇

を見せられているような感覚を覚える。

だけにラストの脳みそで、二度びっくりし、そこで狂気の人を思い出す・・・。

と、演技達者な者同士のやり取りは、ともすれば猟奇殺人と食人という、グロテスクな

印象を、まっとうなミステリー的面白さを堪能し始めて、違和感が消えてしまう。

すると変なもので、到底許容範囲から飛び出ているレンターに、親近感並の感情が

生まれて来る。

だから設定は物凄いのに、強烈な印象が悪い感情を生まない・・・。

これがもし違った配役だったら、ただのスプラッター映画並の感情しか、湧いてこないかも・・・。



ハンニバル


http://www.youtube.com/watch?v=ZHQSViS4uBs

「ハンニバル」 〇一年公開作

おどろおどろした物語でも、役者によってヒットしてしまった「羊たちの沈黙」に気を良くした作家が

書き上げた続編で、今度は被害にあった議員の偏執狂ぶりが引き起こすレクター憎しの陰謀に

クラリスを囮として利用し、おびき出しを図るという、主役はもうクラリスでなくレクターそのものが

なってしまったもので、見るものを圧倒する緊迫した会話もなく、あるのはレクターの異常な性癖

とも言うべき、食人に当てているから「食人豚」などというB級映画並のものを登場させて、折角の

レクターの狂気を映像から締め出して、まるでただのホラーと見なしてしまう劣化を行なってしまった。

何しろ「ピッグ」なる映画で、実際人間を餌にするお話しがあるのだが、こちらは脚本がとてもいい加減

で映像に突っ込みを入れたくなるご都合主義が散見出来、そうなると笑うしかなくなってしまうなんての

があったので、作家も苦労する偏執狂の取扱いってな感想が漏れてくる。

憎悪は分かるとしても、ただの復讐劇では、それはジョディも出るものではないだろう。

ましてレクターがもう超人ではないかと思える。

こうなってくるとヒーローものにありがちな、エスカレートしすぎた超人となって、ファンタジィーである。

映像的にはリドリー・スコットらしい美しい場面もあるのだが、手首を切り落としてのシーンでは狂気は

分かるとしても、なんとも工夫というか天才と謳われたレクターも、所詮はそんな程度かいではなかろうか。

「羊たちの沈黙」のもう千里眼としか言いようのない分析力もなく・・・。





はんにばる


http://www.youtube.com/watch?v=N9oBj_Ict4M

「ハンニバル・ライジング」 〇七年公開作


レクターのキャラクターが評判を呼び、それならと生誕から成長期の・・・、いや

なぜその嗜好に走ったかを映像にした。

だけにオドロオドロした部分が、これまでのサスペンス・タッチからモロ、ホラー・

タッチになってしまい、興ざめさせられる。

取ってつけた後日談的なものになってしまい、突込みどころ満載のものとなって

しまっている。

何より戦時中の妹の惨劇がトラウマとなって、食人に走ったというには「あるかい、そんなこと」

だし、頭脳明晰であるなら実際、自分のその性癖に自虐的心情は死を選ばせるだろう。

もうここらになると、一作目の評判から抜け出せないあるいは、後付でキャラクターを作ろうと

するから無理が表面化してしまう。

もっとも最初からB級映画として見ている分には、それなりに楽しめるものだが・・・。


で、あの事件のただ単に「強姦」がしたかった犯人の、その後の行動には人間的感情は

欠落したままなのは、想像すると背筋が寒くなる。

猟奇事件のバラバラ遺体が・・・。

駄目だ、頭にそれを描くと、映画なら「へぇ・・・、ひでぇ、全くすげぇことする人間もいる、悪魔

だよなぁ・・・」と、他人事で済まされる。映画は映画だ。レクターはスクリーンから飛び出さない。

と、安心するものだが・・・。



羊たちの沈黙 -特別編- (BEST HITS 50)
¥1,340                           といったところで、またのお越しを・・・。