轍の跡を追う女達の無軌道「テルマ&ルイーズ」 | 流浪の民の囁き

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映画を通した過去・現在・未来について、なぐり書き

ロード・ムービーでもあの「バニシング・ポイント」と同じように、追い詰められた時

に起こす行動が似通ってしまう破滅型・・・。

六十年・七十年代の「俺達に明日はない」「明日に向かって撃て」の、また「イー

ジー・ライダー」のラストのすっきりしなささと、犯罪に手を染めた者達の最後にお

いては、バニシング・ポイントを重ね合わせたような終わり方だが、結局男が歩い

てきた道を、女が後を辿っているいるかのような轍の跡を映画に見てしまう。

取ってつけたような成長するのが女性の精神的自立となると、さて・・・。



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http://www.youtube.com/watch?v=SxnJec4Iz0M&feature=related

「テルマ アンド ルイーズ」  九十一年公開作

平凡な妻となっている女と、カフェで働く独り身の女がカフェの経営者の別荘で

休暇を楽しむ。

特に妻となった女の普段の生活のストレスからの解放というたった一泊でも、

楽しみを満喫するべく精一杯のおしゃれをして車で出発と、ロードムービー的

始まりが、「旅の恥は書き捨て」があちらでもあるようで、浮れた二人は飲み屋で

大酒を飲み、寄ってくる男に色目を使い、そして引っかかった挙句に襲われそうになり、

相棒が拳銃で未遂に終らせるが、相手のプライドを傷つける言葉に相手を撃ち殺して

しまう。で、楽しいバカンスはそのとたんに逃避行となりと、犯罪者ロードムービーとな

って、お話はどんどんエスカレートしていって、かっぱらいはするは、脅しはあるは、

挙句に持ち金ペテン師に巻き上げられるは、の警察権力からどんどん追い詰められ

ていくと、これが男二人だったら、どっかにあったなぁの感想が漏れる有り触れた物語

だが、これが女二人で、どちらも心に傷を持ちとなると、観客に感情移入をさせるから

犯罪者が警察に追われて、男だったら壮絶な撃ち合いで殺される、あるいは自爆と行

き着く先はだいだい知れてきてしまうのだが、そこは女二人の決断は先が読めない・・・。

はずもなく、といってここで簡単に投降してしまったらそれこそ映画的面白みもない。

だから大胆にも「飛びます、飛びます」のラストを用意して、女だって潔く死ぬことが出来る・・・。

で、ラスト・シーンは互いの心情を理解した笑顔が、化粧もしていないのにやたら可愛い女と

なって昇天へと・・・。

全編を貫く音楽も、それなりに「イージー・ライダー」のバックに流す音楽とか、七十年代の

価値観を女に当てはめてと、映画自体は巧く作ってある。

ただ、従属するような女が、「本来の姿に戻った」はないし、この当時のフェミニズムとかの

女性蔑視の考え方への反発としてみると、これ以前の映画で描かれる犯罪を犯した男達の

歩いた来た道のなぞらえと見て取れてしまう。

要するに目先は女のだが、七十年代で語り尽くされた社会への反発とか、理不尽な不条理

な世相とかをかみ合わせを、再現してみたと捻くれ者は見て取ってしまう。

だからこそラストは「飛びます、飛びます」の終り方でないと、とてもではないが喪失感が味わ

えない。それに映画としての仕舞い方がこれ以外の方法はない。

あの「バニシング・ポイント」でもそうだが、結論ありきの中身をどう膨らませるかが、脚本・監督

の手腕となるものである。

で、金を巻き上げるペテン師をブラット・ピットが快演していたりと、後になれば評価も違ってくる。

七十年代の映画を見ない人にとっては、それは新鮮な犯罪ロード・ムービーとなる。


にしても、ロード・ムービーってのは展開が速く、さしてラストが印象的に描かれると余韻も良くなる

というか、誰でも持つ旅への憧れや興奮がスクリーンに映される自然な風景で、「つもり」になれる

からか、記憶に残るものだ・・・。

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Amazon.co.jp                    といったところで、またのお越しを・・・。