頑固爺が愛しくなる「ストレイト・ストーリー」 | 流浪の民の囁き

流浪の民の囁き

映画を通した過去・現在・未来について、なぐり書き

先日、中国の美談としてリヤカーに母親を乗せ自転車で三千キロの旅に出た親子の道中の

話題をテレビで見たが、自転車とかバイクとかは旅をするにあたっては、それもありと思えるが

これがトラクターとなると、もうそれだけで・・・。

そんな酔狂な老人のロード・ムービーは、一人旅も手伝ってどうしても背後に哀愁が漂い、

「ハリーとトント」よりももっと切実な後姿にほろりとしてしまう・・・。


ストレート
http://www.youtube.com/watch?v=a1Wjql9JfaQ&feature=related

「ストレイト・ストーリー」 九十九年公開作


知的障害のある出戻り娘と暮らす老人の元に、兄の倒れたの報に接して見舞いがてらの

死ぬ前に謝罪をしておこうと思い立ち、遠くで暮らす兄の元に自力で向かう。

運転免許もなく、あるのはトラクター時速は十キロも出ない代物、周囲の者は無謀と止めるが

ストレイトじいさんは、一時は持っていたトラクター故障で自宅に舞い戻るが、中古を探し再び

兄の元へと仕切り直しを・・・。

ここらからは空恐ろしくテンポの遅い風景と、ぶった切りのエピソードが挟まれていく。

それらのサイド・ストーリーの解決を描くことなく、じいさんのトロトロした旅を・・・。

この映画の監督はデビット・リンチで、これまでの映像と少し違っておどろおどろした場面もなく

フリークスの印象が強烈だっただけに、なんとも変な気分になる。

ストレイトじいさんの物語だから、この題名ってなこともあろうが、やはりストレート、直線って意味

が良く映像に出ていると見ることが出来る。

サイド・ストーリーの出会いなども、もう老人には心動かされるものもなく、ゲバラのように見るもの

が新鮮ではなくなった年寄りには、目的以外のものへの関心はなく、あるのは思い出したくない過

去の出来事。だから科白もやたらぶっきらぼうなのだが、そこに含まれる背景が見ているものにも

理解出来る頃には、この頑固じいさんへの愛しさが年齢への愛慕となって、観客に静かに感動を与

える。

そして兄の元に・・・、寡黙な老人同士ははしゃぐでもなく言葉少なく・・・。

と、ロード・ムービの映画としては、とんでもなくスローな、それでいて頑固爺の行動が胸に迫る静か

な感動を呼ぶ・・・。

で、テレビでの中国人の物語も実話で、こちらも実話なのだが、あちらの中国人の「チベット」を目指す

物語は、その放送時期も相まって、なんとも嫌な気分になった。

まぁ中国人はチベットを自国としているのは分かるが、村から出たことない老人が見てみたいで、自転

車にリヤカーで・・・。どうしても感情移入出来ないのはなぜなのだろう・・・。

文化大革命というそれまでの文化否定をしておいて、今になってチベット仏教とその自然に愛着を抱く

どうも親子愛は素晴らしいのだが、そこにチベットが絡んでくると・・・。

それがこちらの頑固爺には、トラクターのトロトロもあってか、どんどん愛しい感情が湧いてくる・・・。

老人の孤独の影が、その背中に張り付いて見えるからか・・・。


リチャード・ファーンズワース/ストレイト・ストーリー
¥3,990                              といったところで、またのお越しを・・・。