「愛は静けさの中に」のような女性の純真でまっすぐな心も、それはそれで
とても感動するものだが、男の純情というのも時には、ほろりとさせられる。
そんな映画が、遠い昔の記憶から甦ってきた。
http://jp.youtube.com/watch?v=JCYseZX-tEc
「無法松の一生」 残念ながら歌の映像です。
映画化は四十三年、五十八年、共に監督は稲垣浩。
で、この映画は日本人の心意気を表したものであるのだが、ちらっと脳内に花が
咲いた人にとっては、違った見方が出来るみたいで、それを引用
「明治時代の北九州・小倉を舞台に繰り広げられる、人力車夫・富島松五郎の生き様と、
陸軍大尉の未亡人とその息子との人間的な触れ合い、そして未亡人への秘められた
思慕の情がみずみずしく描かれ、全体主義を映画は無言で批判しました。ファシズム
の時代の中で、無垢なる正気の一徹さを貫く松五郎の姿が、当時の日本人の心を強
く打ちました。小さきものや弱きものへの愛情が、そのまま時代へのレジスタンスとなった。」
まぁ、この作者岩下俊作がこの文章を読んだら、笑い出すだろう。
これは映画評論などというもので禄を食む人の文章だが、すんばらしく戦後の偏りが酷いの
を分からせてくれるし、何も娯楽作品を難解にする必要もない。
まぁ金になる評論は小難しい文にしたためないと、小難しい性格の人には読んで賛同しても
らえないってな、ところもあったりして・・・。
こういった富島松五郎みたいな日本人は、明治時代ごろごろしていたし、何より封建的であっ
ても自分で選択した自由はもっていた。
今のように何から何まで自由で在りながら窮屈な時代と、封建の中で自分で選択する自由で
は、どちらがよりその人は幸せだろう・・・。
で、またまた転載の記事
いつもラジオからの歌声で、それに触発されたような書き込みになってしまっ
て申し訳ないが、今日もそのたぐいのお話です。
FM放送で演歌が流れるのは珍しい。もっとも聴くといっても車に乗っている
時だけだから、物凄く限定された時間だが、いつもはポップスが主なものだっ
たが、今日はなんと「無法松の一生」あの村田英雄である。
それを聴いていてそういえば、小さい頃公民館の横の広場で、映画を見た記憶
が甦ってきた。私の小さい頃は、町内でそんな催し物もあった。
それらは季節柄夏休み期間である。両親は忙しくほとんどほったらかしがその
頃、どの家庭でも常識だった。
だけに暇を持て余し、夜やる催し物でも親は、行っといでで送り出してくれる。
今だったら危険すぎて子供たちだけで外出させないだろう。
まぁ、相当な田舎を想像してもらえば当たりで、公民館の前は寺、その横は墓
地と後は回りは田んぼが広がる田園地帯、そこに娯楽のない田舎の人が集まっ
て、映画鑑賞会だ。上映は子供だましのお子様向けの短い映画と「無法松の一
生」だった。写真は三船敏郎だが、記憶では三国連太郎かなって思っていたの
だが、それも違って阪東妻三郎のやつみたいだ。
何しろその頃だって古く、時折フィルムが切れるなんてあって、繋がるまでじ
っと暗闇で待つ。するとそういう時に限って、あの蚊の羽音が耳元で騒ぎ出す。
するとむきになってそれらと格闘しだす。もう映画どころではない。
皆でさんざ相手の背中、頭と叩きだす。まぁ、決まってフィルムが繋がる頃、
大人たちが怒り出し、それは止むのだが・・。
この「無法松の一生」は、小倉という地名と、幼い同年代の男が出ている。
それだけでも身近に感じるのに、この松五郎の破天荒な行動と、少年に対する
思いやりに、ああ、こんな大人だったら仲良くなれるなぁ、と子供心に思った
ものだ。そして松五郎の純情さと最後の雪のシーンには、年老いた男の儚さが
ジンと胸に染みた。少年の頃だから、あんな死に方はとてもショックだった。
だからだろうその後、この映画を見ていないにも関わらずすらすら書ける。
ただこれを書きながら、途中で検索をかけてみたらこの映画、二度ほど検閲に
引っかかりカットされている部分があるそう・・。
細かいところは覚えていないので、それが大切かどうか判断つかない。
でも全体的に子供にもインパクトを与える映画だったと思う。
ケンカ太鼓の勇壮さ、そしてあの子供をかばう、いやかばいとおす優しさ・・。
人の迷惑顧みずなのだが、憎めない行動、そういえば昔は背中に彫り物がある
年寄りが多かった。子供心にとても珍しく、良く触らせてもらったもので、そ
れがヤクザだとは思わなかった。何しろ顔も怒ると怖いのだが、普段はとても
気さくで優しいのだ。もっとも年とともに皮膚が弛みだすと竜が亀みたいにな
って、何だかかわいそうな背中になってしまったけど・・。
この頃の映画でもドラマでも、そんな主人公はめっきり減って見ていて楽しく
ない。はちゃめちゃで男気に厚く、そして寅さんより純情なドラマが見てみたい。
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