恋愛において普段、考えたこともない健常者という、要するに五体満足な者と
聾唖者というハンデを負った者との関係は、どういったものになっていくのか
という健常者同士でも隔たりがある男と女に、普通の恋愛を取り持つものは
何か・・・。
手話での会話という、とても静かな映画となった「愛は静けさの中に」には
女流監督ならではの、繊細な琴線に触れる柔らかさがあった。
http://www.youtube.com/watch?v=ox4OyhhZkzE
「愛は静けさの中に」 八十六年公開作
この映画は主人公の経験不足の理想に燃える教師と、聾唖者の心の繋がり
を映像化したものである。
何よりこの映画は、障害者が主役であり、その関係から会話は手話である。
だけに言語が少なく字幕に真剣に向き合うという、鑑賞も少し違ってたものに
なったが、喚き散らしの醜さも手話でやられると、より胸に迫る訴えとなる。
主人公は家族にとって傷つけられ・・・、それも実の姉に・・・、それも女性にと
っては耐えがたき蹂躙という奥底の不信が、理想の教師となるべく勤しむ青年
の情熱に少しづつ溶けていく、それに伴って女性は自立というハンデを乗り越え
る希望も見出していく。
それらを女性監督らしい繊細なタッチで映像にしたため、抽象的な「愛」を具現化
し、プールでの結びつきは、こういったものが「愛」といえるものと確かに映像にし
たためた。
主人公を演じた女優は実際の障害者であり、見事な演技を見せていたが、実際
にこの教師役に恋をしていたのではと思える・・・。
何より、関係が深まるにつれなんだか表情も輝き、それに伴って映画の中で綺麗に
なって行くのを見ているこちらが感じる。
だから分かり合えた後の表情は、なんとも気品があって愛らしい・・・。
と、映画は静かだがとても沁みるものだった。
で、こういった障害者を以前接客をしたことがある。
女二人組での来店で、注文をとりにいき、無言で紙片を手渡された時は面食らったが
互いに手話で会話しているのを見て、納得出来あまり気持ちの良いとは思えない微笑
を浮かべて戻ったが、その対応が気に入ってもらえたのか、ちょくちょく店にやって来て
くるようになり、その中の一人はこの映画の主人公と同じように美人であった。
その女性がそれまでとは違って、男性を連れてきた時は、正直嬉しくもがっかりした記
憶があるが、その女性の幸せそうな笑顔が、この映画を見た時、思い出された。
それまでは何しろ、何かおどおどした態度だったものが、変わるもんだなぁと、しみじみ
感じたが、言語を直接伝えられない人の方が、より感受性は豊かなのではないか。
まぁ、この女性もある時を境に来店しなくなったのだが・・・。
それはバイトの一言が大きく影響している。
「聾唖者だからね」新米のアルバイトへのアドバイスだったのだが、だからこのバイトを
責められないが、それが聞こえた五人での来店の女性達はそれ以来、来店しなくなった。
無口な対応も時には、とても優しい行動となるものだ・・・。
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