人間の不安を煽るものに文章や言語があるが、実際に一番戦慄するのは、
見えない何かではないだろうか。見えている現象は、避難・逃走、打ち勝つ
気力でなんとか乗り越えられるような気もするが、見えない何かとか、実態
のない超常現象、そしてこの映画の最大の恐怖は生誕である・・・。
http://www.youtube.com/watch?v=eFB8TYG8Vx8&feature=related
「ローズマリーの赤ちゃん」 六十八年公開作
我が子の誕生を心待ちにする時、普通の親となる人は最初に頭に浮かべるのは
身障者には悪いが「五体満足で・・・」ではないだろうか・・・。
それを逆手にとって恐怖の映像にしたのがこの映画である。
まずはゴシック調のアパートへの夫婦の引越しからして、なんとも空気は淀み、隣
人達は一風変わった人々と、出だしから観客に不安を掻き立てさせるが、ここらは
悪魔という日本的に言えば、あちらは「好きよねぇ」的、心の体言としてそれほどぴ
んと来ることはないが、それが母となる女性へと向うと、もう膨れたお腹が恐怖に変
わってくる。
それがじわりじわりと観客を、奈落に追い落とすかのように、先を想像させてしまう。
監督のロマン・ポランスキーの演出は冴えている。
ホラー映画の範疇だろうが、血が出るでもなく悪魔が姿を現すでもなく、それでいて
映像も音までも恐くなってくる。
何しろ生誕までの伏線で、もう悪魔の存在を観客に十二分に認識させ、そして身篭
った母親に疑念を抱かせるというか、そういったキャラクターを作り上げ、膨れるお
腹ととともに、どんどん恐怖の実態が「悪魔の子」という、想像するにおぞましい存在
へと追い込んでいく・・・。
逆にいえば、この映画は倫理的には相当に違反である。
今でこそエコー診断で赤ちゃんの画像を見ることが出来るが、それ以前は十ヶ月十日
生誕を楽しみにしている。それが・・・。
まぁ娯楽とは、一面は残酷なところがあり、それに気づかず指摘されてはっとなることも
多々あるものである。視点を変えただけで、とても面白い映画と、不謹慎なものとは紙一
重なところも、それでも持ったりぶりか、それとも監督の美学か生誕した赤ちゃんを映像
にすることなく、「赤ちゃんの目に何したの?」のセリフを被せて、観客の想像に任せ、より
恐怖が膨らむ仕掛けを施している。
だから違った見方をすれば、卑怯な手法でスプラッターみたいに、映像に載せれば間違
いなく教育機関から注文が来てしまう類いなものの恐怖である。
実際、物議をかもしたが今ほど映画娯楽に厳しい目は向けられなかったと思う・・・。
にしても、この映画は西洋の思考でも、生誕を扱いそれがとんでもなく恐怖を生むという
これまでになかったものではないか・・・。
以後はどうしても映画手法は、二番煎じに陥るから・・・。
奈良や千葉で起こった妊婦のたらいまわし、あれらは認識の甘さもあるが、このローズマ
リーのような知的な女性にとってのジョツクは、大切に育てと慈しむ自己犠牲が、悲劇を
受け入れるという、何ともな結末は気分が暗くなってくる・・・。
と、日曜なのに、外は良い気候である。
憂さ晴らしの一曲を・・・。
http://www.youtube.com/watch?v=BR3xcZ-osqE
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