疲れ果てた哀しみ・・・「ひとりぼっちの青春」 | 流浪の民の囁き

流浪の民の囁き

映画を通した過去・現在・未来について、なぐり書き

不況が吹き荒ぶ三十年代、少額の賞金目当てにマラソンダンスに

挑む失業者達の悲哀を描く・・・。

といった生易しい設定ではない映画が、邦題になると何とも青春の

一こまを切り取ったかに錯覚させるが、これはあちら版「楢山節考」

ともゆうべき、それも自ら望んでなくという日米の考え方の差が非常

に現れた作品である。



hoses001
http://www.youtube.com/watch?v=V04EPbaFSdA

「ひとりぼっちの青春」  七十年公開作

不況のさなか、何とかして生きる糧を得ようと賞金がつく見世物に

参加した人々のそれぞれの人生模様を活写した映画で、原作が

「廃馬を撃つのは誰?」という、もうその原題を見れば映画の内容も

薄々分かるし、悲惨な物語になるのは・・・。

で、マラソンダンスにのめり込み、意地で通したヒロインの悲しい結

末だが、演じているのはジェーン・フォンダで鬼気迫る演技を見せている。

あの「バーバレラ」のお馬鹿役とはとても思えない迫力である。

金への執着というより、もう競技としてのダンスの勝利しか頭になく、ペアを

組むマイケル・サラザンを叱咤激励し、ののしり悪態をついてもレースは止

めない気丈な女が、主催者のあざとい見世物としての人間を最大限にこけに

するように、勝利が近づいた二人に結婚式を提案・・・。

が、その結婚式は主催者の心尽くしでなく、有料で賞金のほとんどがそれで

消えるという、残酷な申し渡しに主人公は張り詰めていた糸が切れるように、

精神的に立ち上がれなくなる。そして原題のように恋人役のサラザンが、

廃馬となった恋人を撃ち殺すと、まさに救いのない映画で、さまざまな人々も

精神錯乱を起こす者、心臓発作で亡くなる人と、過酷を通り越しているのにも

拘わらず、限界が来ていない人々はレースを止めることがない・・・。

物語は淡々とレースの模様なのだが、それはまるで人生を早回しで見せるか

のようで、監督のシドニー・ポラックの冷徹な目は、原作を理解し文字を映像に

見事に活写して見せた。

廃馬とはアメリカらしい表現であるが、要するに日本の姨捨山「楢山節考」と同

じで、役に立たないものはいらないという、超現実的思考法が、人間のメンタル

を破壊してしまうということになる。

ただ日米の違いは、日本の場合自ら経済危機を和らげるため、それへと納得す

る行動に出ているが、アメリカは廃馬を誰が撃つんだと、自殺が許されないキリ

ストの教えもあり、その人の意志であっても撃ち殺すという行動に出る・・・。

にしてもこの映画は、余程の人でない限り見終わった後の気だるさは経験する

のではないかと思う。

まぁ、この映画を思い出しのは「後期高齢者医療制度」というおためごかしの政策

の欠陥が明らかにおかしいものである。それから姥捨て山、楢山節考と来て、そう

いえば年齢は違えど同じようなお話をと、思い出したのであった。

本来なら楢山節考を題材にとも思ったのだが、あちらはある一定の年齢になり、

老婆が自らそれを覚悟してという日本人のメンタリティーの優しさを書くのが辛い

から取り上げなかった。

にしても、この映画のジェーン・フォンダは見違えるような演技を見せてくれる。

ではあの「バーバレラ」はと考えれば、やはり男だなぁ、あのロジェ・バディムみたい

なのに引っかかると、ただ通過点という存在の男というのも、羨ましくも哀れかも・・・。

この映画の悲惨な状況を思い出すと、気持ちが滅入る。

そんなときは、軽い音楽で・・・。

もっともこちらも馬繋がりで・・・。

http://www.youtube.com/watch?v=LDL02th72u4

「名前のない馬」 アメリカ


ひとりぼっちの青春
¥2,764
Amazon.co.jp



banner001
                    といったところで、またのお越しを・・・。