カウボーイの複雑な気持ちをちょぴり知る「シティ・スリッカーズ」 | 流浪の民の囁き

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映画を通した過去・現在・未来について、なぐり書き

牛追いを職業にしているカウボーイを体験する都会暮らしの三人の男の

それぞれ迷い込んだ、どつぼからの脱却に光明を見出す変な形のロード・

ムービが、この映画「シティ・スリッカーズ」である。



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http://www.youtube.com/watch?v=F9udUqvGV78&feature=related

「シティ・スリッカーズ」 九十一年公開作

ニユーヨークに住む三人の中年男は、それぞれに悩みを抱えて長い休暇の

時を毎年楽しんでいた。前年はスペインの牛追い祭りに参加して・・・。

導入部はなかなかしゃれている。

で、今年はカウボーイの体験で、二百五十頭の牛の群れをミネソタからコロラド

まで移動させるという体験ツアーに参加する。

勿論休暇をエンジョイするための参加だから、生身の生き物を扱っている感覚は

乏しく、楽しく過ごせればのゲーム感覚が三人の神経を支配している。

そんなツアー客を引き連れていくのが、ジャック・パランス演じる老カゥボーイで、人

生の苦渋を請け負ったような顔に凄みがあり、このだらけた集団を、一気に緊張感

のある「生活」に追いやっている。

そして都会的思いやりという欺瞞の関係に、これまで控えていた本音が飛び出し、

諍いも激しくなっていくが、この老牧童はそんなことに頓着せず、目的遂行のための

行動を強いる。

やがてこの老牧童にあこがれに近い思いを抱き始めると、うまい具合に牧童は心臓

発作で亡くなってしまう。とたんに押さえられていたほかの牧童がのさばり、しかし体

験ツアーだが、めきめき意志が強くなる客は牧童を逆に脅してしまう。

次の朝、トンずらしてしまう牧童に、客達は途方にくれるも、牛追いの目的に三人は

果敢に挑戦していく。

もうこころらは、完全なロード・ムービ的趣旨で、お遊びではない「生きる」意味が映像

を通して、観客に伝わり始める。

特に自分で生ませた子牛が川に流された場面では、子牛を助けようと、果敢に川に

飛び込み、他の二人も助けようとなりふり構わず、川へと・・・。

そして無事、牛を引き連れて牧場にたどり着いた三人に待ち構えていた、無為な行為

の代償「絶滅危惧種でないから、牛は食用なのだ」の牧場主の生き物を扱う悲哀をぶ

つけられ衝撃を受けてしまう。

が、体験した貴重な思いを胸に、今までとは違った姿勢で三人は都会へと帰っていった。

と、ストーリーはいじいじした中年の人生の生きがいを、全く違った職業を通して、やりが

いを見出していくという、都会生活に疲れた人へのエール的映画に仕上がっているが、

体験したツアーは「生き物」だが食用、それを命をかけて、あるいは苦しむのを止めさせる

ため殺してしまうと、命とのやりとりが笑いの中に込められている。

だけになかなかな秀作となった。

カウボーイの気分がテレビの「ローハイド」から、そんな生易しいものでない、生きるか死ぬ

かのやりとりを体験して、貴重な命、それを生死を賭けて守り、挙句が食用・・・。

格好いいが、生半可なものでないを諭している。

この映画、これのヒットで二作目が作られたが、そちらは見るに忍びない出来で、この脚本

があったればで、普通であればより年老いた三人が、高齢者となり虐げられるところから

人生を見詰めなおすとかにすれば、より良いものになってのではないか、残念である。


ここではカウボーイに憧れて、体験ツアーを通して生きる意味を再認識するという主題と、

扱っているのが食用にされる「生き物」で、食用生き物をパックでばかり見ていると、全く

見えなくなる生き物の悲哀が、敢然と映像に映し出される。

「ベィブ」と同じく、食用という宿命を持つ生き物・・・。

だがしかし、その命を人間は「頂いている」、肝に銘じべきはそういった「感謝」の気持ち

であろう。

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                 といったところで、またのお越しを・・・。