直前のエントリーで、笑いながら女の凄まじい執念を書いたが、それに関連する。
女の執念を以前、梶芽衣子の「怪談昇り龍」「修羅雪姫」等を取り上げたが、
女のリベンジに燃える怨念の凄まじさは、やはり「さそり」の松島ナミのキャラクター
が、一番その表情にも合っていたように思う。
http://www.youtube.com/watch?v=DIM6vth85NM
「女囚さそり」 七十二年公開作
監督伊藤俊也の作詞の「恨み節」もこの映画のコンセプトを強調して
強烈な印象を残す。
篠原とおるの漫画原作の映画化であるが、アニメでなく実写なところ
が、この原作についてはリアリティがある。
物語は信じていた男の裏切りで、潜入捜査をするというところにはちょ
っと無理があるが、そこからの凄まじいレイプ、そして恨み骨髄の女の
出刃包丁での裏切った男への逆襲場面と、主役の梶芽衣子は体当た
りである。何しろ片乳も露わに出刃包丁と下着姿で警察署に殴りこみ
だから・・・、ただこちらはこれは少し笑いが漏れて仕舞ったが・・・。
そこから題名になる女囚となり、女刑務所での凄まじいいじめと人間関
係を「恨み」のそれだけで克服し、なんと脱走、そして・・・。
ここからまるでマカロニ・ウェスタン並に、格好が黒で統一し何よりナミの
雰囲気を画面一杯に披瀝していた。
言葉すくなく無表情で殺戮しと、もうガンマンのそれとなんら変わらず、
次々復讐を遂げていく・・・。
何しろ黒の服装がぴったりはまる復讐劇は、観客には溜飲を下げる
出来で、バイオレンス映画としても、とてもよく出来たものである。
http://www.youtube.com/watch?v=QfitSpseS5Q
「女囚さそり 第四雑居房」 七十二年公開作
これは続編というより、公開時期からして、最初から組まれていた
ものではないかと思う。
再び投獄されたナミを待ち受ける刑務所長の目をやられた執念が
凄まじい残酷ないじめを、そして再び脱獄して・・・。
と、今回は仲間と一緒の脱獄での逃走が主になり、そこでの裏切り
とかが絡み、バス・ジャックとか、責任を感じて一人投降とか、そして
繰り返される壮絶ないたぶりに私怨を抱き、ラストはもうトレードマー
クの黒で統一した帽子にロングコートの、見ただけで相手が震え上が
りファッションで、所長から昇進した憎むべき相手をめった切りで、復讐
劇は終わりを迎える。
で、この作品は前衛かぶれがあり、やたら幻想的映像を盛り込んでいて
共演の女優の面目も立つ出来栄えであるが、一切意味があるとは思えず
無理しているの感想が生まれた。
http://www.youtube.com/watch?v=6OBZ5yCgOZU
「女囚さそり けもの部屋」 七十三年公開作
この映画、出だしの何気ない地下鉄車内から、もう展開が目を離せない。
何しろドスほ隠し持ちは分かるとしても、ドアの開閉の寸前、手錠をかけられ
その刑事の腕を切り取ってしまう、有り得ねぇ展開なのだか、それを強引に
認めさせる迫力が、都会の雑踏を手錠と切り取った片腕をつけたまま逃走さ
せるという物凄い場面には、唖然とするしかない。
だからもう、出だしからの衝撃でぐいぐい映像に見せられていく。
で、今回は怨念より、他人の恨みを晴らさでおくべきかと、「恨み屋本舗」的展
開で、執念は凄まじく、刑務所に逃げ込んだ恨みの相手を追って、自ら刑務所
へ入所するという、そしてナミを見た相手は発狂と・・・。
この三作品は監督が同じ伊藤俊也で、ナミの心情とその執念の凄まじいものを
良く描いていたと思う。
勿論、当時の反体制という語句が見え隠れするのは仕方のないこと、いやその
代弁としての松島ナミが登場したと、見ることも出来る。
で、人気作品なので、続々作品は発表されるが、この後の四作目で梶芽衣子は
主役を降りている。
その四作目は、どう転んでも良い出来とは言いがたく、この三作で「さそり」は終
わって仕舞ったのが良かったのではないかと思える。
いくら配役を変えても、松島ナミは梶芽衣子とダブるものであり、それ以外では
とたんに魅力が失われていってしまう。
それは「さそり」の評価を下げはすれ、上がりはしないものだ。
だから紹介も、この三作だけになった。

といったところで、またのお越しを・・・。