冗談といいながら、そこに本音が隠れていたり、些細な出来事を笑い飛ばして
いるのにはそう考えたくない、いや悩むより笑って仕舞いにした方が角が立たない
大人の処方箋・・・。
外見を繕いながら、だが本音は表題のような思いを抱くってな、思いをしたことが
人それぞれとはいえ、あるやなしや・・・。
だからこそ、こういう設定はシリアスでは気色悪く、笑いとならなければ・・・。
http://www.youtube.com/watch?v=yLj1X-TdO2U
「女房の殺し方、教えます」 六十五年公開作
ジャック・レモン主演のコメディの題材は、酒に呑まれた男の
一夜の出来事で、見知らぬ女を妻と娶るという笑える話し。
で、主人公の職業が漫画家であって、間違いから結婚してしまった
ことを悔やみ、なんと妄想逞しく妻殺害の完全犯罪のストーリーを
したためてしまう。
それを妻が見てしまい失踪すると、改めて妻の存在を認識し、愛情を
確認して探し出すうちに、いつの間にか妻殺害の容疑が掛かってしまい
悪戦苦闘し、やがて罪が晴れる頃、妻が姿をあらわし、めでたしめでたし
のハッピーエンドの物語である。
その道中のレモンの弱った態度が「アパートの鍵貸します」で見られる頼
りなさで笑わせてくれる。そして密かにしたためた思いが違った方向へと
突き進むと、再びより頼りない演技で、笑わせてくれる。
で、相手役の「ヴィルナ・リージ」の妖しい表情も良かったのだが、イタリア
女の厭らしさと健気な女に、すこし落差を感じるのは、私くらいだろうか。
何しろこの後も、この映画と似通ったもので健気な役を演じているのだが、
相手はマルチェロ・マストロヤンニであり、より以上に健気な優しい女となって
いるのには、この映画も影響かとも思える・・・。
にしても、ベターな物語だが、発想が発想なだけに笑いながらも本音は・・・。
http://www.youtube.com/watch?v=Igpy90k7yEY
「殺したい女」 八十六年公開作
こちらは財産目当て結婚した男が、事業で大金を手にして妻が
いらなくなり、その殺害を企てるも、その前に妻が誘拐される。
そして殺したい女の誘拐だから、そこは誘拐でなく殺してくれの思いが
と、展開が速く、笑いの壷が満載である。
「狸と狐」のばかしあいとばかりに、やられる側もやる側もと大混乱していく。
主演の被害者いや妻をベット・ミドラーが演じているのだが、あの「ローズ」
や「キャバレー」の艶やかな姿はなく、大阪のおばちゃんバリの猛烈な我儘
ぶりに、誘拐犯もお手上げと、彼女に一体何があったか、なんて思わずにい
られない壊れたおばさんを熱演している。
騒ぎはどんどんでかくなっていくのは、こういった笑いの映画にはつき物だが
はちゃめちゃぶりは、笑い転げるにはもってこいである。
にしても邦題の「殺したい女」はよく考えた題だと思う。
題名だけ見るとどきっとするし、なんともな感じを受けるが・・・。
映画を見ていると、なんとも頷ける性格の・・・。
と、妻を殺そうと思い立つ二本の映画を並べたが、流石にこういった設定は
笑いの壷を心得ていて、安心して笑っていられる。
ただ現実には、「殺したい」と思う時、空恐ろしい形相に女でも男でもなるものだろう
なぁ、シリアスな考えを排除して笑ってごまかせ、どうせ世の中、自分の思い通りに
行かない・・・。そうすれば平和な過ごし方が待っている・・・。
なんて・・・ね。