六十年代後半の混沌としたアメリカ社会に、突如として現れた
魂の歌い手、ジャニス・ジョプリン、六十七年のモンタレー・ポップ
では、居並ぶ歌い手を押さえて、観衆の度肝を抜く歌を披露して、
一気に全米にその名を轟かせた。
しかしあまりに全身全霊を傾けて歌う姿勢は、「生き急ぎ」が、そし
て感受性豊かな一人の女性を、あっという間に追い詰めていく・・・。
http://www.youtube.com/watch?v=EB9pfgHdW9A
「ローズ」 映画のものでないジャニスのトリビュート
ジャニスをモデルにしたベット・ミドラーの映画。
その破天荒といえる言動と、育った過程での「傷」がある意味では
良く描かれているが、反面実際のところは、描ききれないジレンマが
映画に張り付いていた。
なにぶんにも歌い方も違い、また似せた言動も違和感たっぷりである。
ただ、この映画の良さといえばラスト・シーンは印象的である。
あまりいい思い出もない故郷への凱旋ライブ、そのステージで息絶える
は、理想的なジャニスの死に方ではないだろうか。
実際は安モーテルで人知れず息を引き取った哀れさは、映画に関しては
なく、「バラ」に例えて貰うのは、なんとも天国で笑いそうである。
http://www.youtube.com/watch?v=7i4aBA_176M&feature=related
「コズミック・ブルース」 映像は関係ないものだが、音源はジャニス
ラストに歌ってもらうのであれば、この曲がベストだったように思う。
「ローズ」もいいのだが、この「コズミック・ブルース」には、ジャニスの心情が
痛いくらいに綴られている。
対人との軋轢、感受性の強さが作らせた歌だと、今でも思っている。
「時は過ぎ、友達は去ってしまう・・・、ああ朝がやってきた、たった一晩で二十
五になってしまったわ、でも、何にもわかんないし、何にも変わらない・・・、
必要なものは分かっている、でも私は行動し続ける・・・」
ジャニスの独白、それが誰に向かっていたかは今更ながらに、心打たれる。
実の母に疎んぜられ、とうとう最後まで意思の疎通が出来なかった。
それでもこの歌は、その母への思いをありったけで歌っていた・・・。
「旅の重さ」の自立が、ほんの少し甘っちょろいと感じるのは、壮絶な生き方を
実践してしまったジャニスを知ってしまうと、そんな感想がでて来てしまう。
http://www.youtube.com/watch?v=QpekvYoOcW8
「おもひでぽろぽろ」
このジブリ作品のラスト・シーンは、「ローズ」で締められている。
主人公の設定が二十六となれば、「ああローズが参考になった」
作品と、こちらは考えてしまう。
生き方は真逆のようでありとなるようだが、さりとて人間個々のかかわりにおいて
それ程の差異はない。
むしろ漠然とある「不安」が、ジャニスも押しつぶし、ドラッグや酒に走らせたと、
考えると、ここでの主題もなんとなく共通してくる。
淡々とした日常、それを都会暮らしの切なさは救ってくれるようで、しかし淡々とした
日常とは、我慢と慈しみの積み重ね。
といったところで、またのお越しを・・・。