ベトナム戦争の映画というのは沢山あるが、それらのもので勇猛果敢に
敵を殲滅し、大勝利という映画は作られなかったように思う。
どちらかといえば厭戦として描かれ、アメリカ人が犠牲になった傷ましい
戦争であったという描き方がもっぱらである。
時を同じくして公開された映画が、その年のアカデミー賞を分ける結果に
なったのが、共にベトナム戦争の後遺症というのも、なんとも・・・。
http://www.youtube.com/watch?v=Bu9H0dQ1HgA
「ディア・ハンター」 七十八年公開作
芸達者な者達の「ベトナム戦争」の悲惨さを描いている。
といっても描いているのは、アメリカ側であり戦いの意義も
目的意識も希薄な者達の、精神の荒廃が描かれている。
勿論、そこに至る過程も極庶民的な人間が、危険な遊びに
というか、それへ突き動かされ発狂する様は、痛々しいばかりで
あり、「間違った戦争」を痛烈に観客に教え込む。
ただ、ここで少し引いてみると、アメリカは悲惨だったになるが、
ではベトナム人はどうだろう・・・。
祖国での戦いと、助っ人的立場では、自ずから精神的な心持は
違っているはずである。
勇猛果敢な全滅でも描けば、あるいはバッタバッタとアメリカ兵が
やられている映画だったら、アメリカ国民は見るだろうか・・・。
ここらに悲惨さの陰で、姑息な打算が見え隠れする。
ベトナムは悲惨でなく、間違った戦いで、不遜な態度が手痛い敗北
を喫したという、ところを後遺症として哀愁を込めてしまうから、戦争の
目的が云々でなく、現象のみが語り継がれ、観客にとって簡単に感動
という「お涙頂戴」映画の出来上がりである。
もっともこの映画は、背景を考えずに感情移入すれば、流石にアカデミー
の作品賞を取るだけの映画ではある。
こちらは少し捻くれているから、こういう感想もありだと思うのだが・・・。
http://www.youtube.com/watch?v=RkevzYfTQoo&feature=related
「ディア・ハンター」主題歌 シャドーズ
この映画を殊更、印象深い物にした功績は、この音楽にある。
「春がいっぱい」なんて、とてもいい曲がある、このバンドはこういった
曲がお得意で、いい味を出している・・・。
http://www.youtube.com/watch?v=1pi-fIgBG_Y
「帰郷」 七十八年公開作
こちらはハル・アシュビー監督の、アカデミー女優・男優賞
を獲得した映画で、傷痍軍人と不倫に陥る将校の妻、そして
ぴんぴんと元気に帰国する夫の三角関係を旨い具合に演出
している。メロドラマにベトナムをくっつけたという、「ディア・ハンター」
に比べれば、とても設定は軽い。
それでもオスカーはこちらになってしまうのだから、とことん悲惨でなく
ある程度でないと、評論家にはというか、アメリカの風潮として狂気に
陥るという、悲惨な現状はふさわしくないとなるのか・・・。
にしても同時期に公開されるものに、どちらも帰還する者達の悲惨さ
に反戦が静かに浸透する狙いはいいが、さてベトナムは?・・・。
被害が甚大だったのは、勿論ベトナムであり、今になって様々な事柄が
公になってきている。
映画は映画だ、結論はそこに行き着く、「カミング・ホーム」だったのかも
って、この物語、感情移入が「ディア・ハンター」並に出来ない物だったから
こんな感じになる・・・。
http://www.youtube.com/watch?v=cZH70cxshbQ
「カミング・ホーム」
歌っているのが誰だかわからないが、これは現在のスライドではないかと
思われる「カミング・ホーム」の無言あるいは疲れ果てた帰国・・・。
これがさて、戦場に行ったことも、戦ったこともない人々に、現実はどう映っ
ているのだろうか・・・。
人気ブログ・ランキング「映画」に参加しました。
上記の記事が良かったと思う人は、クリックしていただけると
幸いです。
といったところで、またのお越しを・・・。