フレデリック・フォーサイス原作ものは、「ジャッカルの日」「戦争の犬たち」
と続いて紹介したが、映画化された中で一番緊迫感もあり、また展開の速さ
組織という目に見えぬ存在の、秘密を守るためなら冷酷な行動にでるのにも
怯まず一民間人が真相に迫ろうとする「オデッサ・ファィル」のサスペンスは、
見ごたえがあった。
http://www.youtube.com/watch?v=LS8OM9_38VM
七十四年公開作
戦争犯罪として規模の大きさが飛びぬけていたナチス・ドイツの
ユダヤ人虐殺に関わったナチス親衛隊の秘密組織「オデッサ」
のファイルがルポライターの手に入り、それを元に真相を追究し
ていく道程と、知られぬよう防御する組織に、イスラエルの犯罪
追求の組織が加わり、緊迫の度合いを高めていく。
と、映画は原作同様、入り乱れての神経戦が展開され読み物と
しても見るものとしても、大変に面白い作品になっている。
イギリスと来れば、007でおなじみのスパイ小説がお得意で、
これも謎解きパズル並に、親衛隊の「くもの巣」的組織の全容を
明らかにしていくという、また残忍で非人道的行為が明らかな犯罪
の張本人と加担した人々への追及は、一見正義が根底にあるから
見ているものは主人公へ肩入れしていく。
すると組織立っていない危なっかしさや、非力な人物像により真実を
見ていってしまい、その組織が実在したかのような錯覚に陥る。
フィクションとしての完成度が、いつしか真実の完成度へと置き換わっ
ていく。史実的にさてこの組織があるのかないのか、何よりイスラエル
の被害者とすれば、あったとなり今でも追求するということになる。
問題提起にはうってつけの小説で、ナチス親衛隊の残虐な人物像は、
嫌というほど映画になっている。
中でも女親衛隊という、有り得ねぇ設定でサディステックな映画が、
あのジェス・フランコになれば、拷問の有様を克明に描いてみせる。
というか、それを撮りたいがために、実際に戦争犯罪人として裁かれた
収容所所長の妻を、ことさら広げて見せた一面が・・・。
ここで描かれるルポ・ライターは、なぞを芯に追求する正義感を持ち合
わせて翻弄されていくが、報道とは表面をなぞるだけでなく、どこまでも
追いかけていく姿勢は大切で、このところの時間の早さに追求が疎かに
なっている報道という正義に、いささか落胆している。
政治的思惑の事柄では、どこからか支援の金が出ているからか、追及
という一見、正義面で紙面を埋めるやからが、今でもいるのには反対に
怒りを覚えるが・・・。
そう、戦争犯罪という漠然とした観念でのみ追求している「沖縄の集団自
決、旧日本軍強制云々・・」など、その典型的なものである。
いくら否定の資料が出てきても、感情論が筆を走らせるって、もう報道とは
呼べないものだ。
といったところで、またのお越しを・・・。