豪華客船が突然転覆し、休暇を楽しむ乗客が一瞬にして
必死に生き延びる術を探るパニック映画である。
http://www.youtube.com/watch?v=CP0wV7IvSiI
七十二年公開作
突然の大津波によって転覆させられる豪華客船に乗り合わせた
客の驚愕の後の、生への執着に力点が置かれたパニック劇。
牧師役のジーン・ハックマンがその風貌のままのリーダー・リップ
を取り、転覆して逆さまになった船からの決死の脱出を図る。
ここでもアーネスト・ボーグナインのあくの強い風貌とのぶつかり合
いは、より以上に緊迫感を盛り上げる。
災害に突如、遭遇した人々の困惑とそこからの脱出に賭ける思いと
それぞれの思惑が絡み合い、また困難な時ほどリーダーへの信頼の
重要性と付き従う団結心等、「生きるために前進に躊躇しない、結果が
どうであれ、信じた道を突き進む・・・」という観客に感銘を与える出来で
この牧師の独善にも、最大のピンチにおいては選択の余地のなさを
見せ付ける。
前に「八甲田山」のエントリーでは、リーダー・シップの迷いが一個大隊
を全滅へと迷走させるお話しだったが、こちらは少人数の強烈なリーダー
・シップにおいて、結果の如何にかかわらず付き従う者のみが救われる
と、そこに牧師を当てはめるアメリカらしい性格のなせる技。
ここでもバックで流れる歌が、まるでアメージング・グレースのように、悲
壮感一杯の行動と、その後の歓喜にぴったりあっていた。
http://www.youtube.com/watch?v=J4xLHrdpyE8&feature=related
七十九年公開の続編
こちらは「ポセイドン号」の転覆を知ったサルベージの外側からの救出を
題材にしたものだが、危機感も緊迫感も変な思惑のサスペンス仕立てだから
まったく心に響かず、続編とは思えない酷い出来の映画になった。
http://www.youtube.com/watch?v=YbX0B7AHESU&feature=related
二千六年のリメイク版
こちらは特撮にコンピュータ技術が生かされ、転覆から逆さまになるまでの
展開が大迫力で、映像に吸い込まれる。
ただそこに重きがあり、危機に陥った時の人間劇はすっかり抜け落ちて、
特撮の迫力ばかりが目立つ映画になっている。
大体に初作を超えられないのは、初作を見た人が比較検討が入り込み感情
移入出来ないのも原因かもしれないが、やはりパニック映画の見所は、災害の
惨さ、最大限に再現した映像もあるが、そこに至っても「常に前進する人々」という
コンセプトが、より以上に観客に感銘を与えるし、その場に至った時の心情が画面
から飛び出すと、架空が現実感をもって見て貰える創作の素晴らしさが加味される
のではないだろうか・・・。
また、「八甲田山」でもそうだが、惨事における人間ドラマにこそ、生への憧憬を観客に
再考させる原動力になるものではないだろうか・・・。
といったところで、またのお越しを・・・。