著作権の切れた良質な映画「恐怖の報酬」 | 流浪の民の囁き

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映画を通した過去・現在・未来について、なぐり書き

五十三年公開作品は、日本の著作権が失効しているから権利を云々

出来ず、価格もそれなりに抑えられたものとして販売されている。

そんな中に、とても今でも通じるドラマを盛り込んだ作品があった。

金のために危険と分かっていても、その仕事を引き受けるあぶれ者

達の困難と個々人の葛藤を描いた「恐怖の報酬」は、その題材と共に

記憶に留まる良質な映画である。





http://www.youtube.com/watch?v=MvtV0zPqJVU

五十三年公開作

主演のイブ・モンタンも渋く、陰のある役を好演している。

またこのストーリーがなんとも、金の必要な男に危険と

分かる仕事に突き進めさせる。

前半は退屈になる程の、ここへのそれぞれの事情をだらだら

と垂れ流して飽きが来るのだが、これが後半の展開において、

結構な伏線を敷いていたのが分かる仕掛けになっている。

仕事を請け負った人々の性格付けによる、これでもかの試練が

待ち受けそれをクリアする点に現れてくると、それでなくともはら

はらどきどきは運ぶニトログリセリンという危険な液体を、いやが上

にも緊迫感と共にキャラクター及び危機に陥った時の人の普段と

違う対応に幻滅や見直すサスペンスを観客に分からせる。

モノクロという色彩の乏しいところを、逆に巧みに使ったカメラワ

ークの妙は、夜と共に危険を画面に映し出していた。


http://www.youtube.com/watch?v=CKm6E2ypYFg

七十七年公開のリメイク版

監督、ウィリアム・フリードキン

「エクソシスト」「フレンチ・コネクション」を撮った監督らしく、前作に

よりパワフルな刺激的映像を加えていて、見た目には派手になっている。

ただあぶれ者達の渋さがなく、その点は前作の出演者に及んでいないの

は残念なことである。

危険な代償という、貧困や生活苦とのコントラスト、あるいは逃れへの布石

の点でも、モノクロのものの方が共感出来るし、恐怖という感覚は前作に及

ばないのは、前作を見てしまっている者の感覚の残像が影響している。


と、リメイク版には前作への思い入れのある観客には、もうひとつ響かない

のは音楽におけるカバー曲と似ている気がする。


                   といったところで、またのお越しを・・・。