特撮が描く「戦争」 その三「大空のサムライ」 | 流浪の民の囁き

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映画を通した過去・現在・未来について、なぐり書き

世界に轟いた零式艦上戦闘機、通称「零戦」のパイロットだった

坂井三郎の物語である。



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http://www.youtube.com/watch?v=KWAkaOLj0Ok
七十六年公開作

監督は丸山誠治、特撮監督川北紘一

円谷亡き後、戦争ものにおける特撮には、「激動の昭和史

沖縄決戦」という映画が七十一年に公開されているが、これ

は監督岡本喜八と脚本新藤兼人という、毛色の変わったもの

であり、違ったエントリーで取り上げるか・・・にしたい。

で、この映画の監督丸山誠治は「キスカ」「日本海大海戦」と共に

六十七年に「山本五十六」も監督しているのだが、特撮的には地味

なので、ここでは取り上げないで、この坂井三郎のものになった。

もっともこの監督、特撮以外のデティールの作り上げは見事で、主人

公達の私生活も丁寧に描き、当時の認識、そして男の行動規範をよくよく

映画に投射していた。

この映画でも、坂井三郎の性格を丹念に映像化している。

藤岡弘もなかなかに好演だと思う。

特撮的には日本海海戦の蒸気船での海上バトルと違って、今度は戦闘機

による空中戦なのでスピードが要求される。

使用機種がとかのおかしさはあるが、それなりにバトル場面も面白い出来上

がりであるし、坂井が負傷し帰還するまでの工程もはらはらさせられる。

限られた予算での本物らしさを出す苦労が、この特撮からは感じられる。


坂井三郎の本が原作だが、パイロットというだけでなく当時の日本人の心情

を良く表していて、実直・誠実そして祖国としての日本の認識が、またオランダ

の輸送機を発見しながら、窓に見える母子を見て撃墜しなかったエピソードに

当時の日本人の心意気が現れているように思う。

この坂井に似たような艦船での戦い終わって米軍を救出してやったのお話しも

あるのだが、「不都合な真実」を隠したい人々がいて、沖縄の冷酷無比でなけれ

ばならない軍隊って、同じ日本人でも、同じ物を食べても脳内では消化の仕方が

違ってしまうらしいのに、嘆かわしい気持ちが湧いてくる。

この映画を撮った丸山誠治もこれを最後に、日本映画は撮っていない。


                      といったところで、またのお越しを・・・。