東宝の特撮は怪獣物以外でも、その真価を発揮し少ない予算のうちで
臨場感溢れる画面を見せ付けていた。
今となっては、綻びも見えてしまうが、戦争における救出劇を描いた
「キスカ」には、モノクロ画面も手伝って周囲を敵に包囲されてしまった
島からの脱出に賭けた男達の熱気が伝わってくる。
http://www.youtube.com/watch?v=le93LW1aKMY
六十五年公開作
太平洋戦争の中、北太平洋のアリューシャン列島近くの
アッツ島が米軍との戦闘で玉砕を果たし、キスカ島に迫る
米軍から取り残されている将兵五千二百名を救出させる
という、奇跡に近い作戦を敢行した日本海軍の心意気を
特撮の妙も手伝って、戦争一大叙事詩となっている。
ここでの映像がモノクロであり、実際の戦闘場面でのニュ
ース映像も織り交ぜ、ストーリーも演技もかなり気が篭っていた。
何より米軍に包囲されてしまった島の生き残りを救出するという
戦争においては無謀な、あるいは現有勢力をも失いかける危険
を押して救出に出向く海軍の心意気には、熱いものがある。
今ではこんな映画があったのも、「沖縄の集団自決」がごり押しする
軍命があった、あったのだと喚く人々にとっては、残酷無比の日本軍
なのだから、作られた美談、いや戦争兵力だったからのこじつけが
出てきそうだが、島に犬二匹だけで脱出させた奇跡の作戦は、残念な
がらあったのであり、冷酷無比な軍隊が救出に犠牲を厭わず向かった
のだ。
この救出劇には、尾ひれもついてすっかり日本兵がいなくなったのにも
係らず、臆病な米軍はいるものと信じてこれでもかの雨あられの艦砲射
撃を繰り返し、その後上陸すると疑心暗鬼から同士討ちをおっぱじめてし
まい、挙句軍医の発案で「コレラ収容所」の立て看板を建物のところに残し
ておけば、パニックになり即座に本国にワクチンを送らせるという慌てぶり
を示していた。
物量に任せた攻撃を得意とする米軍に、知恵で対抗した日本軍の面目躍
如な出来事である。
まぁ、この出来事も悲惨な戦争だった「沖縄」では、国民を守らない軍隊で
押し通すやからが跋扈するから、どこの国の話し?ってな具合になる。
と、特撮で描く戦争ものという映画だが、「大魔神」と同じように時代
背景が資料で分かる史実は、怪獣ものの空想がない分だけ特撮以外
も丹念に描かれていて、見ごたえのある映画となっている。
特にこの「キスカ」は、同胞救出という英断を下した軍部とそれを実行し
た将兵に喝采があってしかるべき出来事を、後世に伝える役目を担った
映画ではないだろうか・・・。
といったところで、またのお越しを・・・。