六十七年公開のマイク・ニコルズ監督作は、何からの「卒業」か、
とても奥深い情念を、さらりと描いて見せた。
一応のハッピー・エンドとして、映画は「良かったね」で終わっている。
http://www.youtube.com/watch?v=X-3PP7hfIm4
この映画にも、アン・バンクロフトは出ている。
これが「エレファント・マン」や「奇跡の人」とは打って変わって
退廃的主婦役で、主人公の性衝動の相手役であり、主人公の
恋人の母親と言う、何ともな役柄であるのだが、年齢を重ねた
重みがあり、とてもはまり役となっている。
主演はダスティン・ホフマン、そして恋人役がキャサリン・ロス
と音楽がサイモンとガーファンクルで、ストーリーのいかがわし
さを音楽が救った映画と見る。
何より印象的な曲をちりばめ、辛辣なやりとりを封じ込めて、
綺麗なシーンばかりが、印象に残った。
勿論、バックの音楽によるところは大きい。
ラスト・シーンは主人公が花嫁を奪うところで終わっている。
未来はばら色か?、はたまた・・・。
この監督はこの後「愛の狩人」という、中年の退廃を描いてい
るのだが、それがアンサーのような気がする。
その映画には、歌のアート・ガーファンクルが出ていて、ぐれた
中年を演じていた。
「一瞬の幸せ」がてな見方も出来る映画ではあった。
もっともこの映画や「ジョンとメリー」という映画から触発された
詩があり、曲をつけて歌った人が日本にいて「ダスティン・ホフ
マンになれなかったよ」という秀逸な曲を歌っていた。
今は既に亡くなってしまったが名を大塚博堂といった。
とても惜しい・・・。
http://www.youtube.com/watch?v=eZGWQauQOAQ
主題歌「サウンド・オブ・サイレンス」も、パーカションとエレキ・ギター
のポップス調でないアコーステック・バージョンで、さて当時ヒットした
だろうか疑問が残る。そのアコーステックのステージ模様動画。
http://www.youtube.com/watch?v=tywEnVjPUUQ
「ボクサー」
サイモンとガーファンクルの中では、一番いい作品だと思っている。
「明日に架ける橋」というアルバムの中の一曲であり、貧困に立ち向か
う少年の、社会の欺瞞と格差を「ウソで、ウソで・・・」と哀しく叫ぶ様が
見えてくるようである。
そういえばお笑い芸人の「中学生ホームレス」の麒麟、田村の話題に
どうしてもこの「ボクサー」を思い出してしまう。
この「卒業」も音楽によるところが大きくヒットした要因ではないだろうか
この作品でアカデミー監督賞を獲っているのだが、音楽賞の方が合っ
ている気がしないでもない・・・。
といったところで、またのお越しを・・・。