お笑いからシリアスまで、心に残る「ジャック・レモン」 | 流浪の民の囁き

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映画を通した過去・現在・未来について、なぐり書き

ジャック・レモンという俳優は、お笑い芸人も真っ青の笑いからさえないサラリーマン役

そしてシリアスな悪役までもこなす、オールラウンド・プレイヤーだった。

ピーター・セラーズの笑いとは、一味違う笑いもその後に来るほんわかした優しい雰囲

気も、見終わった後の印象に残る演技はなかなか一味も二味も違っていた。



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このパンフレットのおかしな夫婦は、前作「おかしな二人」と同じニール・サイモンの

脚本で、妻役をサンデ・デニスが演じているのだが、これがアメリカ的おしどり夫婦

役にぴったりであった。

デトロイトの田舎から栄転の話でニューヨークへと旅立つ夫婦が、妄想する優雅な

生活と現実に起こるさまざまな出来事、勿論すべて悪い方へ転がっていくのだが、

その不幸にさいなまれる夫婦がたどる工程が、兎に角笑わせてくれる。

もっとも最後は、おしどり夫婦らしく見果てぬ夢破れても、絆は深まると最後はハッ

ピー・エンドである。だから見終わった客は、笑いながら大切なものを学び取る。


http://www.youtube.com/watch?v=JFCVpNkNczY&mode=related&search =

こちら「おかしな二人」競演はウォルター・マッソーで、性格の合わない二人が、いが

み合いながらも変な形での友情、にしても考え付く悪戯の数々は「いい大人が・・」

と思いつつも、ケラケラ笑わせてくれる。初老の独り者二人の哀愁に満ちた生活ぶり

もしんみりとしながら、人間は一人では生きていけないのを分からせる・・・。


http://www.youtube.com/watch?v=cRta_ko0XGU&mode=related&search =

こちらビリー・ワイルダー監督作の「アパートの鍵、貸します」ここでのうだつの上がら

ないサラリーマン役と、憧れの女性、シャリー・マクレーンとのやりとりは何ともレモン

のほのぼのとしたキャラクターが生きていて、ほろりとさせられる。


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http://www.youtube.com/watch?v=2OhdD5n405I&mode=related&search =

コメディとして傑作の呼び声が高い「お熱いのがお好き」この主役はマリリン・モンロー

だが、トニー・カーティスとジャック・レモンの脇が引き立てて成立している。

この二人がギャングの殺害現場を目撃してしまうところからドタバタのコメディになって

いくのだが、ビリー・ワイルダーの演出は女だけの楽団を作り出し、そこに逃げ込む男

の女としての仕草を男に強要する可笑しさを、これでもかと注ぎ込む。

今では女装も珍しいものではなく、中性だって不思議に思われない世の中だが、当時

としては笑いにするしかない、にしてもお笑いの中にマリリンの魅力を引き立てる道具

立ては見事である。よりマリリンの肢体的魅惑に声も勿論だが、キャラクターも今でい

う天然を持ってくるから、愛らしい対象として女性でも嫌味なく見惚れる。


その他、「エアポート77」でのパイロットでは、責任感のあるまた信頼性のある役柄を見

事に演じている。あの頼りなげなサラリーマン役や、「酒とバラの日々」のアル中の役ど

ころとは百八十度違ったものでも、見事にこなしている。

「チャイナ・シンドローム」みたいな社会性のある映画にも、お笑いを脱皮した後は、それ

こそオール・ラウンドで活躍した。

そして親交厚かったウォルター・マッソーが2000年に息を引き取ると、後を追うように2

001年六月に、亡くなっている。「おかしな二人」の共演以降、二人ともお笑いからシリア

スまで揃って活躍していたが、残念なことである。

何しろ年齢と共に演技に厚味が加わって存在感があったのだから・・・。


                        といったところで、またのお越しを・・・。