七十一年公開の「ウィラード」は六十三年「鳥」、六十九年「猫」と動物パニック映画が
あったが、この作品では「ネズミ」がパニックを引き起こすが、この作品が動物の扱い
にもまた描き方でも、一番良い。もっとも人間の感情を理解し裏切りを許さぬ性質は
少しばかり「ネズミ」の味方に立ってしまうっていうか、人間の身勝手さを痛いほどに
分からせる啓蒙が含まれている感じだ。
主人公は友達もなく、また片親の言いなりに毎日を過ごす少し屈折した性格の持ち主
没落した家に母親と二人住まいで、母親に「ネズミ」駆除を言いつけられて・・・。
で、彼は「ネズミ」の行動に感心を示し、やがて白い「ネズミ」と変な交流が生まれてくる。
http://www.youtube.com/watch?v=ILzzzVLtiRU
地下室で飼い始める主人公を「いちご白書」のブルース・ディービソンが
孤独というより今でいう「オタク」全開演技で、夢中になっていく。
で、「ソクラテス」「ベン」などと名前をつけ、始終寄り添うように暮らし始める。
その間も「ネズミ」算に増えていき、餌にも困る主人公は、癇癪を起こして怒
鳴ったりするのだが・・・、ここら辺、人間の身勝手さが出ていて意味なく嫌わ
れる「ネズミ」に観客は肩入れしだす。
それ以上にこの主人公の上司、アーネスト・ボーグナインが演じているがこれ
が意地悪おっさんを巧みに演じ、観客はこちらにも嫌悪をしていて、白い「ネズ
ミ」ソクラテスが殺されると、その憎悪が一気にふくらみ、解雇された逆恨みで
飼いならした「ネズミ」の群れを連れ、この上司に復讐を遂げてしまう。
ここらはこのおっさんの表情が、一般にその姿さえ嫌われる「ネズミ」の攻撃と
言う想定外の出来事で、実際は窓から誤って転落へとつながるのだが・・・。
が、しかしこの後、観客は理不尽な主人公の行為に不満を溜めていく。
用が済んだ「ネズミ」が邪魔になった主人公は、ネズミ達を殺し始める。
で生き残った「ベン」が中心となって、この主人公も・・・。
ここらに「因果応報」が見て取れるから、観客も溜飲を下げることになる。
まぁ、この「ネズミ」が襲うシーンはちょっと笑いが漏れるが、物語自体しっかり
した感情のやり取りから、その点は以前のパニック映画よりは安心して、見て
いられる映画だった。
http://www.youtube.com/watch?v=LrFThZgZ9Nw
で、この映画で小さなヒーローになった、生き残った「ベン」を主役にした続編
も作られている。
こちらは人間の機知もなく、勿論「ネズミ」の愛情・憎悪もなく、ただ単に「ネズミ」
の攻撃性・繁殖にバニックになる人々を描いている。
ここら辺は一作目が好評を得て「猿」を主役に据えた「猿の惑星」と似ている。
もっとも賢いというところに一匹だけってのが、なんだかなぁがでてくるが・・・。
http://www.youtube.com/watch?v=YTKNahASSDI
こちらはリメイク版の「ウィラード」だが、物語の作りに本作ほどの詰めもなく、
また人の心理描写もぼやけてしまい、結局はただのパニック映画となっている。
もっとも「ベン」だけがやたら巨大で、ここらにもなんだかなぁ・・・。
七十一年の映画を見た時点では、この繁殖力が異常の都会の邪魔者には、ちょ
っぴり恐怖を感じたものだ。
知能と感情が備わったら、その小ささも手伝って駆除は大変であるし、それ以上に
人々のいらぬ恐怖感で、それこそパニックが起こるのも想像出来る。
知能と感情が備われば、「ネズミ」に限らず、虐げられた種の反逆で人間も滅亡さ
せることは可能だ。
努努、尊大な精神にならないよう心がけねば、「そこに危機が迫る」ってな・・・。
といったところでこの辺で、またのお越しを・・・。