「スティング」七十三年公開の詐欺師が活躍する映画
これの演出で、監督のジヨージ・ロイ・ヒルはアカデミー監督賞に
輝いている。
何より小悪党が大悪党を騙し、それに腐敗した警察官をも騙す
観客はこの小賢しい詐欺師に喝采を浴びせる結果となって、アンチ・
ヒーローが、正義の味方へと変貌するのは心地よい。
http://www.youtube.com/watch?v=rfQj7M7laT8
共演の二人、ポール・ニューマンとロバート・レッドフォードの息は
ぴったりで、軽妙な会話も違和感がないし、詐欺の手口の鮮やか
さとかトランプ捌きの技術は魅せる。
にしても詐欺という犯罪者が主役になる映画の成り立ちも、病んで
いたアメリカならではであろうし、アカデミー賞を取ったのも主役が
悲劇的最後を迎えることなく、華々しく一世一代の詐欺を成功させた
変な形でのハッピー・エンドだったからだろう。
ここらにこの監督、俳優で製作した「明日に向って撃て」での評価と
違った結果があるものであろう。
http://www.youtube.com/watch?v=0zOeYH2mQSM&mode=related&search =
「スティング」の公開に先立つ四年前、六十九年に製作された映画は、
もろアンチ・ヒーローの列車強盗団の活躍する物語である。
その世間的には極悪人が、生き生きと犯罪をこなし犯行時以外はのん
べんだらりと平安な暮らしを過ごす活写は、犯罪の重大性も悲壮感もない
いい意味での鈍感な精神に、恋人までもそれも教師が罪悪感を引きづらず
に付いていく羽のような軽い行動力を芸達者のポール・ニューマン、ロバート
・レッドフォード、キャサリン・ロスが演じている。
またここでも音楽が、映像の重さを相当に軽くして、犯罪者が戯れるシーンで
は、綺麗で微笑ましい人間に仕立て上げている。
ここらにも当時、ベトナムという病める存在があるアメリカン・ニューシネマの勧善
懲悪」的進行への反発が、反転が伺える。
で、作品の評価は良かったが、アカデミー賞は逃している。
これもアンチ・ヒーローの犯罪者礼賛みたいなものへの反発もあるだろうし、ラスト
シーンの官憲に強制的終了がストップ・モーションであっても、少し受け入れられ
ないものだったのかも・・・。
ただこの映画が公開されて以降、西部劇と限らずジョン・ウェインに代表される勧善
懲悪的映画は減っていき、個人の苦悩やアンチ・ヒーローものが幅を利かすことに
なっていく、これと「俺達に明日はない」は史実の物語の再現である点も・・・。
もっとも時が過ぎればゆり戻しも起こり「ヒーロー」はそのまま原寸大の人間となって
甦って、それらが脚光を浴びる近頃だ。
日本でもそのもずばりの「ヒーロー」という、検事が主役の映画まで出来るようになった。
これが以前であれば、検事とは冷淡で人間味のない存在として扱われることが多かった
のを、血の通った人間として魅力的に描いている。
まぁ、そのままヒーローだな・・・、言うことない。
といったところでこの辺で、またのお越しを・・・。