アルフレッド・ヒッチコックが低予算で作ったスリラー「サイコ」が大当たりし、膨らむ
期待に応えて製作したのが「鳥」という、なんのまいぶれもなくいきなり「鳥」が人間
を襲い始めるという「パニック映画」であった。
で、この映画、ヒッチコックの怖さへの導き方が秀逸で、何気なく主人公がカモメに
突付かれる。でその導入部からいっせいに鳥達が襲い始めると、見ている観客も
訳がわからぬまま、その映像に釘付けになった。
映画作品としてよりは、その鳥という動物の意外な行動の凄まじさが、大ヒットに
繋がった訳だが、六十三年公開の「鳥」より遅れること六年、六十九年に「猫」という
映画が公開される。
こちらも普段大人しいはずの「猫」が人を襲い、パニックを引き起こす物語だが、
如何せん、恐怖に対する製作者の力量が足らず・・・。
http://jp.youtube.com/watch?v=7GkedyhihfE
この映画は、サスペンス・スリラー的要素があり、「鳥」の
攻撃の不可解さはないもものの、やはり「猫」が襲うシーン
に作り物がまざまざと分かって、笑ってしまう。
発想的には日本の「化け猫」であったら、相当な怖さを演出
出来たかも知れない。
飼い主の無念を晴らす、理不尽な死に対する報いをメーン
にするなら、猫は「化け猫」であろう。
まぁ、それにしても「猫」の毛並みや仕草くらい、もっと研究し
動きに不自然さを残さないで貰いたかった。
襲うシーンは笑いの壷でもないだろうに・・・。
作る人によって、差が出るのは仕方ないが心理的恐怖心を
もっと盛り上げねば・・・。
と、注文ばかりが先に出る映画であった。
この「猫」に関しては、日本の映画の方が数段、有り得る物語
として認知される。「鍋島藩の化け猫騒動」なんて、そら恐ろし
かった。油をなめるシーンなんてなんとも・・・。
と、B級映画の批評をしても仕方がないし、ペットとして家族並
に暮らす、あるいはほのぼのとした日常の猫からは、想像も出
来ない「猫の怨念」の表現に失敗した映画のお話しでした。
といったところで・・・、またのお越しを・・・。