昨日の「チャンプ」と同じ七十九年公開の、子供が重要な位置をしめる映画である。
父親をダスティン・ホフマン、母親をメリル・ストリーブという役者を揃えた夫婦の諍
いと、断ち切れぬ親子の関係を丁寧に描いている。
もっとも父親は仕事人間で、家庭を顧みない男で母親はそれにストレスを感じ、醒
めた家庭となって、一人息子も大人しく打ち解けない壁を形成してしまうという、当
時広がり始めた妻の自立と旧来の夫婦のあり方、そして家族のあり方にメスを入
れたような作品である。
http://www.youtube.com/watch?v=1IsI7myWztE&mode=related&search =
ここでも子役のジャスティン・ヘンリーの演技が光る。
ただこちらは妻に家出され、離婚を切り出され、今までの生活が一変する
男が、振り回される事情の中で奮闘する姿は、とても微笑ましいし少しずつ
息子とのわだかまりが解け、心を通わせるようになると、今までの仕事中心
の生活の反省と妻への負担を思い知る父親役のダスティン・ホフマンの演
技は素晴らしい、特に息子がジャングル・ジムから落ち怪我をした時の対
応の凄さは、実の親子かと見まごう演技である。
だけに出だしの冷たい家庭の雰囲気が、父子になったのにとても暖かい
感じに変っている。が、それもつかの間、裁判で親権を争い、家出された後
の男の経済力では如何ともしがたく妻に敗訴してしまう。
で、引渡しの日、心を通じ合えた記念のフレンチ・トーストを父子は作り、迎
えを待つ、そこに妻からの電話で、アパートの玄関に出て行った夫に、妻が
こちらも息子の将来を考えた末の結論として、親権を放棄することを告げる。
皮肉なことにここで、やっと夫と妻は結婚当初の意思疎通が戻った。
と、最終的にはハッピー・エンドとよんでいいのかで終わるハートウォーミング
な映画である。
それにしても「チャンプ」もそうだが、父子の物語はどこか哀愁が漂い、そして
男同士の理解が深まる設定は、すんなり受け入れられるのはどうしてだろう。
それとこの映画がどっしりした重い問題を孕むのに、それを清清しくしてくれる
のにバックで流れる「ビバルディ」の曲があるように思う。
たしか「解けない結び目」とかという記憶があるのだが、これもこの映画にあった
音楽だと思う。役者もそうだし相乗効果で、観客に与えるインパクトも大きい。
「チャンプ」がどちらかというと日本的人情劇だとすると、こちらはそれよりは少し
ドライだが、清清しい人情劇と呼べそうだ・・・。
チョット引っかかるのはタイトルだな、この当時、離婚調停親権裁判はこう呼ば
れていたらしいが、今では「クレイマー」は日本語としても理解できる言葉になった。
ではこの辺で・・、またのお越しを・・・。