「チャンプ」「クレイマー・クレイマー」と父子の物語を紹介したが、
七十年代からひとっとびに九十年代の父子の物語を一つ・・・。
このイタリア映画、カンヌ映画祭グランプリ、アカデミー賞三部門
獲得と、とても評価されている。
主役の現代のチャップリンと評されるように、可笑しさの中に哀しみ
が潜み、観客は笑いながら、徐々にこの男のおどけた態度の真剣
さに引き込まれ、やがて哀しい結末に耐えられなくなる・・・。
ポスターに使われたショットは、この男の幸せの絶頂時で、このシーンが
後の哀しみを、より深く観客の胸に刻まれる。
http://www.youtube.com/watch?v=NBfjzzAVjWo&mode=related&search =
これはこの映画の全体的な流れを追ったもので、見た人には思い入れの
シーンの連続は、映像を脳裏に甦らせてくれるものだ。
http://www.youtube.com/watch?v=LIABhwFVbqk
この映画でも、やはり子役が哀しみも喜びもよりいっそう引き立ている。
子供中心の編集は、よりこの野暮ったい男が光り輝く。
http://www.youtube.com/watch?v=PFApRedU95M&mode=related&search =
そしてラストシーンの映像、子役の父親の言葉の信憑性に驚くシーンから
この男が成し遂げた、平凡ではあるが戦時中の庶民の出来うる最大の子供
の延命に父親の「自己犠牲」の美しさが涙を誘う。
で、紹介した三作に共通の父親の「自己犠牲」は、微笑ましくもほろりとさせ
られる。もっとも映画のモチーフがそうだからであって、これが母親目線であ
れば、やはり母親の「自己犠牲」の美しさが涙を誘うことになろう。
にしてもこの主人公の風貌は、どこまでも頼りない。
その頼りなさに、妻となる女性は婚約者があるにもかかわらず母性本能が
刺激された、いくらストーカー並の献身さに理解を示しても、ドジで冴えない
頭に惹かれることはない。
ただ頼りなげな男の献身な態度と思いやりは、いつしか観客も男を見る目が
変わってしまう。そう愛しい感情が湧いてくる。
だけに息子が生まれ、そして理不尽な戦争に巻き込まれ、収容所送りになっ
ても懸命におどける男の姿に、かっこよさと涙が湧いてくる。
あの収容所から脱出し、自らはつかまってしまうが隠した息子の目の前を通
る時の懸命なおどけた仕草には、どうしても涙が溢れてしまう。
父が息子を思う心情が痛々しく、それでいて言葉でない態度から、情愛の深さ
が滲み出ている。カンヌでグランプリを取る演技ではある。
ただユダヤの迫害という、語られすぎた残酷物語にはない雰囲気が、この男の
体臭から感じられる。
これも一種の反戦映画だろう。しかしどんな時にも家族としての絆を大切する態
度は、荒廃しつつある現代の家庭においても、この「自己犠牲」の精神が何より
必要な要素なのではないだろうか。
そういった点では、とても考えさせられる「美しい暮らし」ではないだろうか・・・。
とまぁ、父子三部紹介ではありました。ではこの辺で、またのお越しを・・・。