反体制を気取る若者達のあやふやな、しかし何かに不満がありまた不安も
内在している時期に、社会へ押し出されてしまう心情と学園生活で芽生えた
恋への郷愁を巧く歌にしたのが、松任谷由美の「いちご白書をもう一度」である。
歌のヒットの割に、実際の映画「いちご白書」を知らない、あるいは見ていない人
って結構、多いし、客観的に恋愛の思い出、郷愁に主軸が置かれているから、
学生時代似たような体験をした人なら、共感できるだろう。
だが映画の「いちご白書」は、挫折が一つのテーマになっている。
主題歌の「サークル・ゲーム」は、人生をゲームに喩えアップ・ダウンの繰り返し
で人は成長していくと説いている。
で、私などはこちらの曲により共感を持つ、醒めた目線で「あんなことがあった、
でももう時代ではない」的、あっさりした歌詞の「いちご白書をもう一度」のリクエ
ストを出来る境遇は、ある程度社会に出て確りとした暮らしを過ごせる人、片や
もろに「いちご白書」的学生運動を経験した人達は、感慨も違ってると思う。
どちらかといえば「さよならぼくのともだち」の方に、より共感すると思う。
この森田童子の「さよならぼくのともだち」は、学生運動の挫折がテーマだ。
http://www.youtube.com/watch?v=UIgaarWfhsI
森田の歌は、賛否がとてもはっきり分かれる。
「暗い」という一言で済ます人もいるし、またその独特の世界に
引き込まれていく人もいる。
これも当時、七十年に公開されたこの映画でも、やはり評価は
かなり分かれるものだ。
しかし私は、この映画の手法は後にとても参考にされていると
思う。まず主人公の心情ないし、周囲の状況を音楽で鮮明に
していること。特にCSN&Yの楽曲の多用が上げられる。
「ダウン・バイ・ザ・リバー」「ヘルプレス」「アワー・ハウス」
「青い瞳のジュディ」「サムシング・ジ・エアー」「ザ・ロンナー」
これにジョン・レノンの「ギブ・ミー・ア・チャンス」と映画の魅力
を知り得た作りが、とても印象を深くさせる要因になっている。
特に狂言回しの主題歌はラスト・シーンに被さり、警官に捕ら
えられた主人公の地団駄に、優しく諭すように歌いかけてくる。
「人生にはアップ・ダウンはつきものさ・・」
まぁ、この映画の題名が「いちご白書」なのも納得する。
「甘酸っぱい未熟な白書」の意味合いなのだから・・・。
ただ現実世界は、学園紛争に全身全霊を賭けた学生の挫折感
は、そうそう簡単な処置では拭い切れないだろう。
もしかすれば反体制としてイデオロギーのみをよりどころに、
左翼運動へ没頭していく人もいるし、反対に左翼運動の欺瞞に
気づき、さっさと抜け出てしまった人もいるだろう。
「いちご白書をもう一度」みたいに、遠い世界の出来事に置き換
えられる人は、幸せなのかもしれない。
「さよならぼくのともだち」を口ずさみながら、あの時の充実感、
達成感を引きずる人も・・。
一言「人生いろいろ」で笑って暮らす人には、敵わない・・・。
では、またのお越しを・・・。