どうも。SNS投資詐欺に騙されるのは被害者が強欲だからではなく、現在の生活苦と将来の不安が動機になるからです。言わば彼らは経済政策と年金制度における無策失策の被害者なのです。
それはさておき、映画の感想文を書きます。今回は『アナーキー・イン・じゃぱんすけ 見られてイク女』です。
誘拐された少年を巡り、運命に翻弄されていく人間たちの姿を描いたクロニクル(映画.comより引用)。1999年公開のピンク映画。監督は瀬々敬久で、出演は佐々木ユメカ、佐野和宏、下元史朗、諏訪太朗、佐藤幹雄、奈賀毬子、港雄一、田中要次、飯島大介。
現在はメジャーな一般映画を任せられる瀬々敬久がピンク映画時代に監督した映画です。本作に出演している諏訪太朗と田中要次も、今ではメジャーな映画やテレビドラマで姿を見かけます。
ピンク映画なので濡れ場シーンがあります。それらのシーンはコミカルに描かれ、特にグミョウジ(下元史朗)のスカトロ幼児プレイは笑えます。
濡れ場シーンが見せ場でもありますが、本作は1981年から1999年までのクロニクル(年代記)であり、そのストーリーに興味を注がされます。その期間はバブル崩壊を挿んでおり、それもストーリーに反映されています。
ミズキ(佐々木ユメカ)は誘拐した幼児ヨシキを育て、タツトシ(佐野和宏)と交際すると、血の繋がっていない3人で疑似家族関係を築きます。しかし、その関係は成長したヨシキ(佐藤幹雄)が真実を知ることによって脆くも壊れます。これによって家族とは虚構であり、幻想であることが表されています。
またタツトシは神の不在を説きますが、町外れにある大きな樹木は18年間に及ぶ人々の営みを見続ける神の如き存在です。近くで人が死のうが、パラレルワールド的な展開になろうが、樹木は動かずに佇んでいます。まるで人間の営みなど、ちっぽけなものであるかのように。
本作の舞台は山梨県です。劇中で映る自動車のナンバープレートを撮影用の山梨ナンバーに加工してまで、それを強調しています。かつて山梨県上九一色村には、洗脳された信者が俗物に過ぎない尊師を神と崇め、疑似家族関係を築いたカルト宗教団体の施設がありました。あの宗教団体に関わる問題が本作の基盤にあると解されるのです。
★★★☆☆(2024年4月19日(金)インターネット配信動画で鑑賞)
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