【民話】オンゴロとネンゴロとノロ | じゃんご ~許されざるおっさんの戯言ブログ~

じゃんご ~許されざるおっさんの戯言ブログ~

このブログは、田舎で暮らすおっさんの独り言を日々書き綴っています。ブログタイトルの「じゃんご」とは秋田弁で「田舎」のことで、偶然にもマカロニウエスタンの主人公の名前でもあります。何となく付けてみました。お時間があれば、広い心で御覧になってください。

民話(動物) オンゴロとネンゴロとノロ

 

 昔、ある所に、爺(じっ)ちゃと婆(ばっ)ちゃとおったどしァ、とうふ屋をしていたが子供がいないので淋しく、犬と猫をわが子のように育て、犬にはオンゴロ、猫にはネンゴロと名前をつけてかわいがっていた。

 ある日、じっちゃが豆畑に行って歩いていると、小さな蛇がちょろちょろとでてきた、それは山かがしという蛇だが、あまりかわいいので家へ連れてきてノロと名前をつけた。

「ほれ、仲間がふえたど、オンゴロもネンゴロも仲よくせな」

三匹は仲よく暮し、食物のよいせいか、ノロはぐんぐん大きくなって、それにおとなしい蛇であるが、たまげる程大きいものだから、近所の人はこわがって、とうふを買いに来なくなった。

爺ちゃと婆ちゃは困ってしまって相談の上、ノロだけはもとの豆畑の方へおいてくることにした。

 爺ちゃは次の日、豆畑につれていって、

「ノロや、ノロ、かわいそうだがどもならねぇし、思い切ってけれ」と人に言うようにさとすと、じっと顔をみていたノロは、すなおにするすると穴に入っていったが、まもなく一寸四方の小さな箱をくわえて出てきた。

「じさま、じさま、今までのお礼にこの小箱をあげるから、これは何でも欲しいものが出てくる箱だす。」

ノロは別れて穴の中に帰っていった。

 さて爺ちゃはよろこんで家に入ってから婆ちゃにその話をすると、婆ちゃは「おらだば、米の飯と魚コほしい」というや、たちまち婆ちゃのお膳に、ほかほかの米の飯とうまそうな魚の煮つけがのっていた。それから暮しに何一つ不自由なく、とうふ屋も止めてしまった。

 ところがある日婆ちゃは、爺ちゃにいうには、

「じさまんす、ノロの箱のおかげで暮しになんも不自由ねぇんども、おらなんたって子どもねぇくて心細せ、十七、八の男わらしコな」

爺ちゃは首をかしげて、「頼みごとも程ほどにするものだ」とたしなめたが、婆ちゃはこの先が心配だと聞き入れない。それではと、ノロの小箱に布をかけて、

「なんとしても十七、八の後取り出してたもれ」

すると布きれがもくもく動いて、十七、八の男わらしがしゃんと立っていた。

婆ちゃは「ありがたい、ありがたい」と涙を流して喜んだ。

 ところがそのむすこは、じっちゃもばっちゃも、おど、あばとも言わないし、小箱のおかげで何んでも好きな物を腹一杯食えるし、毎日ぶらぶら遊んでいるばかり、何一つむすこらしいところがない。

しかし、爺ちゃも婆ちゃも「いま急におど、あばと呼べたてむりだべ、そのうちなついてくるべもの」

と大切にして育てた。

 ある日のこと、息子を留守番に二人とも町に出かけた。帰ってみると、息子がいない。宝の小箱もない。爺ちゃと婆ちゃは顔を見合わせて、腰が抜けたようにぺたんと座ってしまった。

涙ぐんでいる爺ちゃと婆ちゃは急に老(ふ)けていくので、オンゴロとネンゴロはじっとしていられない。

「宝の小箱をとったのはあの怠け息子だ、まちがいない、おらが小箱を取り返してご恩返しすんだ」と、白昼は目立つから夜目をきかして、根子から一軒一軒くまなく探した。

萱草、荒瀬、梅雨時にびしょ濡れになって能代まで下った。

すると川向いに新しい家がある、夜川を渡って、この家に入りこむと怪しい匂がする。やっぱり逃げた息子の家で、神棚にちゃんと宝の小箱があって、白ねずみが番をしていた。そこでネンゴロはねずみに跳びかかり、オンゴロは小箱をくわえて一目散に逃げ出した。

川に来るといつの間にか土手が切れて大水だ。しかし、ぐずぐずしておられない。二匹は濁流にとびこんで、押し流されながらも必死になって泳ぎ、もう駄目だと思った時、流れてきた倉の屋根にはい上がったが、大切な小箱が流されてしまった。

がっかりして水が引いてから帰り道、水無まで来ると市日で店が並んで大にぎやか、何か土産をと店をみると魚屋に大ぶながある。

よしあれだとネンゴロは大ぶなをくわえて一足飛び、オンゴロもその後を追うように帰ってみると、爺ちゃも婆ちゃも留守、まずいろりのかぎに大ぶなをかけて、二匹は旅の疲れでぐっすり眠ってしまった。

爺ちゃと婆ちゃと戻ったときは二匹は死んでいた。

「お前たちまでこんたらことになって、よくここまで戻ってきた。家で死んでくれたこと」

爺ちゃと婆ちゃは泣き泣き二匹をお弔いしてから、志の魚を食べようと、大ぶなをおろして、腹をさいてみたら、探していた宝の小箱が出てきたとさ。

それから二人は欲ばらないで、毎日の暮しに必要なだけ小箱に願ってつつましやかな暮しを続けたという。

 

【私なりの解説】

阿仁町伝承民話第一集にある銀山地区に伝わる民話です。人間の息子ではなく、オンゴロとネンゴロとノロが爺ちゃと婆ちゃに親孝行したという話です。

 

 

にほんブログ村 秋田県情報に参加しています(よろしければクリックを!)