【民話】狐退治の話 | じゃんご ~許されざるおっさんの戯言ブログ~

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このブログは、田舎で暮らすおっさんの独り言を日々書き綴っています。ブログタイトルの「じゃんご」とは秋田弁で「田舎」のことで、偶然にもマカロニウエスタンの主人公の名前でもあります。何となく付けてみました。お時間があれば、広い心で御覧になってください。

民話(動物) 狐退治の話

 

 むかし堀切りのあたりに悪い狐がいて、通行人をだましたり鶏を盗むなどして村の人を困らせていた。

 一人の若者がこの狐を退治してやろうと、ある日の夕方地蔵様の裏のあたりをぶらぶらしながら、「このあたりに人をだます狐がいるそうだが、みんな下手くそでおかしいや、おれだばもっと上手に化けるどもなあ」といって歩いた。すると草やぶからぴょこんと一匹の狐が飛び出してきて、「あなたがそんなに化け方が上手ならやって見せてけれ」という。

若者は「そうが、よく見ておれ」と持ってきた袋の中に入り中に用意してきた若い女の着物を着て、かつらを着けて来た。

狐は感心して「もっとやって見せてけれ」と頼むので、こんどはまた袋の中にはいり、こんどは白ひげのおじいさんになって出て来た。狐はますます感心して「どうか化け方を教えてけれ」と頼む。

若者は「よしよし教えてやるがお前に教えるとまたほかの奴らも次々と頼むに来たら大へんだから、ここらにおるみんなに教えるからみんな集めて明日の今頃またここに来い」と言って帰った。

 次の日の夕方、昨日の場所にいってしばらくすると、こっちの草やぶ、あっちの笹やぶとかくれていた狐どもが出て来るわ出て来るわ、何十匹という数になった。

若者は「おおみんな来たが、よしよしそれでは昨日おれがやったようにこの袋の中にはれ」と、昨日のものよりもっと、もっと、大きい袋の口をあけた。狐どほは先を争って袋の中に飛び込んだ。

 そこで若者は「おれのいう通りにするのだぞ、おれがえんやらさ、といったらお前たちは、たんころりん、というのだと言って聞かせ、袋の口をすっかりしばり肩にかけて引っ張りながら「えんやらさ」、狐どもは袋の中で「たんころりん」えんやらさ、たんころりん、えんやらさ、たんころりん、川端の方へ引っ張って行き、坂にかかり袋が転がり転がり方がだんだん早くなり「えんやか、えんやか、えんやか」「たんころ、たんころ、たんころ」遂に川の中へどぶんと落しなに、若者は「そら狐退治した」と喜んだ。

 だが川の向う岸にぬれねずみのようになった一匹の狐がはい上がり、ぶるぶるっと身震いしてから、おかに上がり後を振りかえり振りかえりながら行くので、若者は後をつけて行った。

 すると穴の中に入り込むので耳を澄まして聞いていると、中に年寄りの狐がいるらしく、「マンダのマンコも死んだずな、佐山のサンコも死んだずな、じゅうじゃのジュンコも死んだずな」という声がして、人間にだまされてみんな殺されたのだろうと話をしているようだ。

 生き残っている狐がくやしがって、どうしても仕返ししてやると力んでいるが、年寄りの狐は、「人間は仲々かしこいから仕返しはむずかしい、やめた方がよい、お前は窓から入る気だろうが人間に感ずかれて、きぎ(キネ)を熱くあぶってのべられれば、お前の術はきかなくなるよ」と教えているようだが、若い狐はどうしても仕返しすると頑張っているらしい。

 若者は家へ帰り、今夜か明日の晩あたり来るだろうと待機していたら、次の日の晩、窓のあたりでかさかさと音がして、とんがった顔を出した。

若者は中へ飛び込もうとする鼻先へ、熱くあぶっておいたキギ(キネ)をにゅっとのべたら、狐は家の中へどしんと転げ落ちて来たので、待ち構えていた人たちに、叩き伏せられたという。

 

【私なりの解説】

阿仁町伝承民話第一集にある萱草地区に伝わる民話です。こんなに狐を憎み、酷い目に遭わせる民話が伝承されながら、狐を神の使いとする稲荷信仰もあるのだから不思議です。

 

 

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