【映画評】地獄門 | じゃんご ~許されざるおっさんの戯言ブログ~

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このブログは、田舎で暮らすおっさんの独り言を日々書き綴っています。ブログタイトルの「じゃんご」とは秋田弁で「田舎」のことで、偶然にもマカロニウエスタンの主人公の名前でもあります。何となく付けてみました。お時間があれば、広い心で御覧になってください。

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都で起こった反乱から上皇とその妹を逃すため、平康忠は身代わりの女・袈裟を荷車に乗せて盛遠を護衛に付けた。ところが盛遠は夫がある身の袈裟に惚れてしまい……(Yahoo!映画より引用)。1953年公開作品。監督は衣笠貞之助で、出演は長谷川一夫、京マチ子、山形勲、黒川弥太郎、坂東好太郎、田崎潤、千田是也。
 
大映初の総天然色映画なので、やたらと色を使いまくっています。おそらく使う必要性が乏しい部分にまで使っていそうです。色を使えるのが、よほど嬉しかったのでしょうか。
 
色彩の美しさだけでなく、構図の巧さにも気付くと面白いです。メインで撮りたい人物よりカメラの前に樹木や柱などを配置することによって、遠近法で画面に奥行きを生み出しています。機材を用いずに3D効果を出せるのです。
 
袈裟役を演じる京マチ子が美しいです。『羅生門』や『雨月物語』で見せた時代劇モードの日本的な美しさです。これで現代劇の『』だと、活発なコメディエンヌぶりを見せますから、演技の幅広さに驚きます。
 
盛遠(長谷川一夫)は人妻である袈裟を好きになり、求婚しようとします。これは今で言う不倫です。その上、恋に狂って袈裟の実家にまで押し掛けるのですから、盛遠は今で言うストーカーです。すなわち本作は不倫ストーカーの話なのです(その不倫ストーカー役を当時二枚目スターだった長谷川が演じています。思い切ったことです)。
 
不倫ストーカーは、昔も今も法や道徳を逸脱する行為です。現実に行えば、処罰されたり、非難を浴びたりしても当然の所業です。しかし、物語という虚構の中であれば別の話です。法や道徳を無視するほどの激情は、人間の根源的な何かであり、それが他者や社会と衝突することによってドラマが生まれます。
 
そうした濃厚なドラマに色彩や構図による画の美しさが加わることによって、本作は高レベルな芸術作品と評価されました。カンヌ国際映画祭パルム・ドールなど海外での受賞にも、それが表れています。
 
本作のような道ならぬ恋のドラマが芸術になるという趣旨のことを語ったのに、発言を「不倫は文化だ」と切り取られて大損したのが石田純一なのでしょうな。
 
★★★★☆(2018年2月20日(火)DVD鑑賞)
 
原作は『袈裟の良人』なので、本作のタイトルは『羅生門』を意識したのでしょうね。
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