【映画評】男はつらいよ 柴又慕情 | じゃんご ~許されざるおっさんの戯言ブログ~

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このブログは、田舎で暮らすおっさんの独り言を日々書き綴っています。ブログタイトルの「じゃんご」とは秋田弁で「田舎」のことで、偶然にもマカロニウエスタンの主人公の名前でもあります。何となく付けてみました。お時間があれば、広い心で御覧になってください。

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初夏の葛飾柴又。またまた、突然ふらりと“とらや”に戻ってきた寅次郎。しかし、なんと寅の部屋は貸間に出されていた。ふてくされた寅は自分で下宿を探すと言って出ていってしまう。さっそく不動産屋に出向き好き勝手な条件を言い始める寅次郎だったが……(Yahoo!映画より引用)。1972年公開作品。監督は山田洋次で、出演は渥美清、倍賞千恵子、吉永小百合、松村達雄、三崎千恵子、前田吟、太宰久雄、佐藤蛾次郎、津坂匡章、笠智衆、宮口精二。
 
本作はシリーズ第9作で、おいちゃん役が森川信から松村達雄に代わっています。森川が亡くなったからですね。『マトリックス レボリューションズ』で、オラクル役がグロリア・フォスターの死去に伴い、メアリー・アリスに代わったのと同じです。
 
マドンナである歌子役は吉永小百合です。“寅さんの憧れの人”ファン投票第1位になったからだそうです。今でこそ『母べえ』『おとうと』『母と暮せば』で吉永を仕事をしてきた山田洋次監督ですが、本作では、まだ上手く演出できてない感じがします。
 
と言うよりも、山田監督は、さくら役の倍賞千恵子を美しく撮るために映画監督をしているような人なので、本シリーズでは、マドンナ役が割を食うものです。上記の吉永主演作品は、本来なら倍賞が演じる役を吉永に当てているから、上手く出来ていると言えます。もし倍賞が共演していたら、山田監督は倍賞まっしぐらになるでしょう。
 
さて本作はタイトルに「慕情」とあるとおり、序盤からウェットなトーンになっています。「博とさくら、家を買う」とも言うべき博(前田吟)とさくら夫婦のささやかな夢を、除け者にされた怒りに任せて、寅次郎(渥美清)が罵倒してしまいます。これにより地に足を付けて生活する小市民の博とさくらと、堅気の仕事に就けない社会不適応者である寅次郎との間にコントラストが生まれます。
 
とらやを出た寅次郎は、北陸で歌子と出会います。東京に戻ってから、歌子は寅次郎に好意を持ち、寅次郎は例のごとく片思いして舞い上がります。しかし、歌子が寅次郎に惹かれるのは、父親(宮口精二)のために自己抑圧している自分が、社会不適応者である寅次郎が発する自由に憧れるからです。決して寅次郎個人を好きなわけではありません。
 
それ故、とらやの人々と交流していくうちに自己抑圧から解放された歌子は、結婚に踏み切れないでいた若き陶芸家の下に嫁いでいきます。またしても、寅次郎は失恋します。喜劇でありながらウェットな後味を残す本作は、単なる自由讃歌ではなく、自由に伴う孤独や重荷を寅次郎の生き方を通して描いているのです。
 
★★★☆☆(2017年12月23日(土)DVD鑑賞)
 
金沢の兼六園と福井の東尋坊が映ります。45年前の風景です。
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