
警官の汚職事件の記事を書いた長子は、それが原因で出版社をクビになってしまった。偽の失踪事件を自分で起こしてそのルポを書くことにするのだが、現金横領事件に巻き込まれてしまって……(Yahoo!映画より引用)。1957年公開作品。監督は市川崑で、出演は京マチ子、船越英二、山村聰、菅原謙二、石井竜一、北林谷栄、石原慎太郎。
主人公である北長子役を演じる京マチ子がセクシーです。登場シーンではショートパンツからムッチムチの太腿を露わにし、その後のシーンではムッチムチな胸の谷間まで見せてくれます。その肉感に悩殺されます。マチ子だけに、まいっちんぐです。
セクシーなだけでなく、偽の失踪事件を起こして逃走中なので変装したり、現金横領事件の真相に迫るために危険に近づいたりと、随分アクティブに活躍します。その上、コメディエンヌぶりまで発揮しています。「この人、『羅生門』や『雨月物語』に出てましたっけ?」と思うほど、意外な演技で面白いです。
作品のベースはサスペンス・スリラーでありながら、アップテンポなコメディにもなっています。芥川也寸志のBGMもノリノリで、作品のペースを緩めません。ジョークの効いた台詞の応酬も軽快で、『ソーシャル・ネットワーク』並みの早口になっているシーンもあります(でも聞き取れます)。
本作の軽快なテンポの良さは日本映画らしくなく、市川崑監督のモダンなセンスが十分に発揮されています。ある時期から、日本映画のコメディは脱力系オフビートがオシャレみたいな風潮がありますけど、本作の方がずっとオシャレです。
脚本の久利子亭は、市川監督とその妻である和田夏十の合同ペンネームです。本作と同年に公開された、市川&和田コンビの『満員電車』はクールな風刺劇でした。それと一変して、本作を軽快なサスペンス・コメディに仕上げたのは、『満員電車』を失敗作だと思ったからなのか、それとも似たような話だと飽きるからなのか分かりません。今となっては、両作品によって市川&和田コンビの作風の振り幅が分かるのは間違いないと言えます。
★★★★☆(2017年12月2日(土)インターネット配信動画で鑑賞)
石原慎太郎が青年作家役で出演しています。