
女優として活躍する名美は、同じく俳優の夫・洋介の不倫に悩まされていた。そんな中、彼女は新作映画「レフトアローン」で洋介と共演することに。さらに洋介の不倫相手である若手女優までキャスティングされ、マスコミの注目を集めるが……(映画.comより引用)。2007年公開作品。監督は石井隆で、出演は喜多嶋舞、津田寛治、永島敏行、美景、竹中直人。
石井隆が『花と蛇2 パリ/静子』の次に監督した作品で、R-18作品(成人映画)です。石井作品常連俳優が出演しています。名美(喜多嶋舞)の夫・洋介役の永島敏行は、爽やかなイメージ無しのワルを演じます。名美にインタビューする葛城役の竹中直人は、ギャグ無しのシリアスモードです。
石井監督には、杉本彩主演の『花と蛇』の流れを受け、女優にハードな体当たり演技をさせ、映倫の規制ギリギリまで挑戦する見世物として撮る意図があったのでしょう。『氷の微笑』のシャロン・ストーンを超える開脚や、『花と蛇』でも見せたSMシーンもあります。
しかし、主演女優である喜多嶋が、どうにも魅力不足です。私個人の感想かもしれません。プライベートにおいて、大沢樹生とのスキャンダルが話題になるずっと前から、喜多嶋を女優として全く評価できないのです。その上、喜多嶋が惜しみなくヌードを披露しても、若手女優役の美景が見せるヌードの方が魅力的であるというマイナス効果まであるのですから、どうにもなりません。
石井作品としては、雨のイメージと「名美と村木の物語」という、お約束は踏まえています。本作において堕ちていく名美に対し、献身的な愛を捧げる村木に当たるのは、マネージャーである岡野(津田寛治)です。
更に、作品を劇中劇という複雑な構造にし、ラストでドンデン返しまで用意する手の込みようです(劇中の『ブラックバード』という映画は、石井監督の『夜がまた来る』に似ています。洋介は『ブラックバード』をB級アクション映画と酷評しますが、石井監督は『夜がまた来る』を同様に言われたのでしょうか)。それでも、主役に魅力が無いと観ているのがつらいなあと思ったのでした。
★★☆☆☆(2017年10月21日(土)DVD鑑賞)
劇中で映画撮影の裏側を見ることができるのは映画ファンにとって喜びです。