
幼なじみの17歳、フリオとテノッチは、夏休みに美しい人妻ルイサを誘い、3人で“天国の口”という名の海岸をめざして旅に出る。その道中で、それぞれの想いが現れていく(映画.comより引用)。2002年日本公開作品。監督はアルフォンソ・キュアロンで、出演はガエル・ガルシア・ベルナル、ディエゴ・ルナ、マリベル・ベルドゥ。
アルフォンソ・キュアロン監督は長編デビュー作『最も危険な愛し方』の後にアメリカ進出し、本作は10年ぶりに母国メキシコで撮った作品です。本作の後、『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』や『トゥモロー・ワールド』などで再びアメリカを拠点に活動しています。
メキシコの田舎を旅するロードムービーで、自然や庶民の素朴な風景を撮りながら、長回しや水中撮影というテクニカルな手法を用いています。後の『ゼロ・グラビティ』でも長回しと水中撮影を用いており、キュアロン監督は映像テクニックに凝るタイプだと分かります。そのタイプの監督が、加工が要らない素朴な物を撮影しているというギャップが面白いです。
本作は冒頭から濡れ場シーンで始まり、終始セックスの話で進んでいきます。主人公である二人の頭の中は、常にエロでいっぱいです。「お前ら『パンツの穴』の中学生男子かよ!」とツッコミを入れたくなるレベルです。
本作の設定を日本に置き換えると、にっかつロマンポルノやピンク映画にありがちな作品になります。セットを組む費用を浮かせられるという理由で、ロードムービー型のポルノ映画は珍しくありません。内容的には、人生を旅になぞらえ、性を通じて人間の生に迫るという深みのあるものに仕上げ、高評価を得ることもあります。
主人公の若造二人は、人妻との旅を通じて大人へと成長します。大人になるということは、流れに身を任せられる広い度量を持つこととされています。だから、終盤で三人は感情のまま“一つ”になります。そして、それは若造二人が人妻の末路も難無く受け入れられるラストにも表れているのです。
★★★☆☆(2017年6月24日(土)DVD鑑賞)
主人公を演じた二人は随分出世したものです。