
冬のある日、フランスの小さな村に謎めいた女性ビアンヌが娘を連れて越してきた。母娘は村人が見たこともないような美味しそうなチョコレートであふれた店を開く。客の好みにピタリと合わせて勧められるチョコレートは人々を虜にし、村人はカトリックの断食期間にも教義に反しチョコレートを食べていた。村の指導者レノ伯爵はその事実に愕然となり、ビアンヌを村から追放しようとする。そんな時、ジプシーの青年ルーの船が村にやってきた(映画.comより引用)。2001年日本公開作品。監督はラッセ・ハルストレムで、出演はジュリエット・ビノシュ、ジョニー・デップ、ジュディ・デンチ、アルフレッド・モリーナ、レナ・オリン、キャリー・アン=モス。
“何かのルールに束縛された者”と“外からの来訪者”が出会うことで生じる“化学反応”を描くという点で、本作と同じラッセ・ハルストレム監督の『ギルバート・グレイプ』と同じです。どちらにもジョニー・デップが出演しており、“外からの来訪者”役の女優の名が“Juliette”であるという共通点もあります(本作はジュリエット・ビノシュで、『ギルバート・グレイプ』はジュリエット・ルイス)。
閉鎖的な村に新風を吹き込むビアンヌ役のビノシュが色っぽいです。胸元の大きく空いた服を着て、大人の色気を見せてくれます。
劇中でビアンヌが「(第二次世界大戦が)15年くらい前」という台詞を言っているので、本作の時代設定は1960年頃と分かります。本作はフランスの小さな村にチョコレートで人間性の解放をもたらす話ですが、もう少し後の時代でアメリカに起こった社会的変化をなぞらえているようにも解釈できます。チョコレートの興奮作用で亭主が元気になり夫婦仲が良くなるのエピソードと、若きカトリック神父が口ずさむ「アメリカ音楽」がエルヴィス・プレスリーの曲というエピソードから、“セックス・ドラッグ・ロックンロール”が隠し味になっているようだからです。元はロック・ミュージシャン志望でハリウッドに出てきたデップがヒッピーみたいな役で出演していることも、それを匂わせます。
本作は寓話的であり、どの時代にも適用できる普遍性があります。レノ伯爵みたいな権力者が伝統や道徳を強制し、民衆を抑圧する社会というのは、いつの時代にも、勿論現代にもあります。
★★★★☆(2016年11月9日(水)DVD鑑賞)
美味しそうなチョコレートをたくさん見て、鑑賞後に腹が減るので要注意です。