桑田佳祐のニューシングル『君への手紙』から「メンチカツ・ブルース」を取り上げましょう。
悪ふざけのような歌詞をブルースのメロディに乗せて歌うのは、桑田の得意技です。サザンオールスターズでは「虫歯のブルース」を発表しており、昔ラジオ番組で「ヤギのブルース」なる曲を即興で披露していた記憶もあります。「ヤギのブルース」は「メシ食って~ 紙食って~ ウ○コして~ マ○コして~」という歌詞でした。流石です。
それでは「メンチカツ・ブルース」が、どのような歌詞になっているか見てみましょう(桑田佳祐ニューシングル「君への手紙」スペシャルサイトでも見ることができます)。
メンチカツ・ブルース
作詞・作曲・編曲/桑田佳祐
俺のメンチ食べたのは どこのどいつだ!? ほい
俺のメンチ食べたのは どこのどいつだ!? ほい
ばあちゃんがよく言うことは “道でコロッケるでねえ”
俺がパンツ脱いだのは ゴムが切れたから
俺がパンツ脱いだのは ゴムが切れたから
女房がよく言うことは “タマにゃいいんじゃないのサ”
俺がさんま焼いたのは 一度たけしかねえ(コマネチ ドゥーワップ)
俺がさんま焼いたのは 一度たけしかねえ(コマネチ ドゥーワップ)
魚釣れたら添える 網はタモリじゃねえ
俺のメンチ食べたのは どこのどいつだ!? ほい
(キャ、キャベツしか残ってねぇよ)
俺のメンチ食べたのは どこのどいつだ!? ほい
(メンチだけに、俺にメンチて許しておくれ)
姉ちゃんがよく言うことは “親にハムカツちゃ良くねえ”
俺がウ★コ踏んだのは 朝のハイキング・ロード(コマネチ ドゥーワップ)
俺がウ★コ踏んだのは 朝のハイキング・ロード(コマネチ ドゥーワップ)
“運がイイよ”なんて言うなよ
Bad luck in the morning I'm feeling blue
ちょっと前に当ブログで中島みゆき「宙船(そらふね)」の歌詞を載せたのですが、それとドえらい違いです。場末のブルース歌手の雰囲気を出すため、桑田がアコースティックギター弾き語りで、観客の笑い声や咳払いまで入っています。しかし、歌詞カードを読むと、ヴォーカルにアコースティックギターだけでなく、手拍子、効果音、バックヴォーカルまで桑田一人の手によるものです(複数人による手拍子は他人の手を借りていますが)。すなわち桑田が各パートの音声を録音し、それを編集することで作品を創り上げるという“ひとり遊び”ということです。
11月25日放送のミュージックステーションでは、司会のタモリの目の前で「俺がさんま焼いたのは~」の部分を生演奏し、ウケていました。タモリも即興でデタラメな歌詞を付けて歌う名人で、昔は実際のニュース音声をつぎはぎ編集して、偽の面白ニュースにするという“ひとり遊び”をネタにしていたことを思えば、なかなか趣深いシーンです。「ヨルタモリ」を復活させ、桑田を来店させたい願望が湧いてきます。
さて、2016年の桑田佳祐は『ヨシ子さん』と『君への手紙』で新たに8曲を発表したことになります。桑田は、昨年末の第57回日本レコード大賞で最優秀アルバム賞を受賞した時、「来年はよわい60になります。下劣きわまりない音楽を皆様に向けて発信させていただきたいと思っております。2016年は前立腺に優しい音楽を、オシッコのキレもさわやかに音楽活動にまい進してまいりたいと思います。良いお年を」とコメントしています。今年発表の8曲は「下劣きわまりな」く、「前立腺に優しい音楽」ということでしょうか。
『君への手紙』(初回限定盤)に同封された桑田直筆の手紙には、年初よりレコーディング活動に勤しんできた旨の記述があり、来年に桑田佳祐名義のオリジナルアルバム(前作『MUSICMAN』から6年ぶり)が発表されることを期待させます。