♪桑田の新曲買っちゃったんだよ~ ヨシ子さ~ん 好~きさ~
そんな浮かれた替え歌の書き出しですが、桑田佳祐のニューシングル『ヨシ子さん』(初回限定盤)を購入しました。
通常盤は5曲、初回限定盤はボーナストラック付きで9曲という、もはやミニアルバムに近い作品です。購入前にテレビ番組などで聴いていましたが、購入後に歌詞を読みながら、じっくり聴いてみると、色々な思いが脳内を巡ります。そこで衝動に駆られ、新曲4曲について感想文を書いていきます。曲と直接関係ないことを書くかもしれません。それも含めて私の感想だと理解していただければ幸いです(各曲の歌詞は“桑田佳祐ニューシングル「ヨシ子さん」スペシャルサイト”でご覧になれます)。
1曲目:ヨシ子さん
シングルの表題曲でもあり、4曲中で一番変な曲です。音楽的に言えば、無国籍感が強いです。ミュージックビデオもそのイメージで作られています。
この無国籍感を表すエピソードがあります。livedoorニュース(Techinsight)より引用します。
桑田佳祐は楽曲をメロディーから作り、作詞はそのうちに出来てくるパターンだと明かしている。そのためメロディーだけの段階で仮タイトルをつけるのだが、『ヨシ子さん』は当初“夢の島”だった。つまり“ゴミの島”のことで「ジャンクなものがいっぱい捨てられていて、人間の欲望の後始末がずっと行われているのをイメージしていた」という。桑田自身が聴き終えて「『ヨシ子さん』でございまして、気持ち悪いでしょう~」と表現する独特なサウンドに乗った歌詞の世界は「欲望の後始末」を想像させる。
“夢の島”には、都会のオフィスから、華やかな歓楽街から、昔ながらの下町からゴミが集められます。その雑多性が、「ヨシ子さん」の無国籍感に通じているのでしょう。
この雑多性は、桑田佳祐(サザンオールスターズ)の特徴でもあります。日本語と英語交じりの歌詞、日本語を英語のように歌う歌唱法、ロックだけでなくラテンや歌謡曲のテイストも取り入れた楽曲など、桑田(サザン)の活動には「純○○」というものがないように見えるからです。そして、その雑多性こそが桑田(サザン)のオリジナリティにもなっていると思うのです。
この「雑多性こそオリジナリティ」という矛盾した言い方は、日本の特徴にもなり得ます。戦後日本はアメリカ文化に強く影響されながらも、それを取り入れた独自の文化を作り出してきました。明治時代の文明開化でヨーロッパ文化を取り入れたこともそうであり、もっと遡れば、平安時代から中国(支那)文化も自文化に取り入れています(漢字から平仮名と片仮名を作り、漢字仮名交じり文を定着させたこと。大陸風の衣服を和服にアレンジしたこと。海外原産の野菜や果物を根付かせ、それを食材にした和食を創造したこと等々)。
そう考えると、桑田(サザン)が国民的歌手(バンド)として長く愛されてきたことも納得です。桑田(サザン)は、実に日本的な存在だからです。そして、如何にも売れ線な3曲を差し置いて、自らのオリジナリティを象徴する「ヨシ子さん」を表題曲にしたことに、還暦を過ぎても衰えぬ、桑田の秘めたる自己主張を感じるのです。
ショートバージョンの動画です。