【映画評】ムカデ人間2 | じゃんご ~許されざるおっさんの戯言ブログ~

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このブログは、田舎で暮らすおっさんの独り言を日々書き綴っています。ブログタイトルの「じゃんご」とは秋田弁で「田舎」のことで、偶然にもマカロニウエスタンの主人公の名前でもあります。何となく付けてみました。お時間があれば、広い心で御覧になってください。

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狂気に満ちた医師が、複数の人間の口と肛門とをつなぎ合わせ“ムカデ人間”をつくろうとする姿を描いたカルトホラー「ムカデ人間」(2009)の続編。ロンドンの地下駐車場で夜間警備員として働く中年男のマーティンは、映画「ムカデ人間」のDVDを繰り返し見ては、自分も“ムカデ人間”をつくりたいという欲望にかきたてられる。マーティンは、駐車場で目をつけた男女を次々と拉致して倉庫に監禁。邪悪な計画を進めていく。過激で残酷な内容に世界各国で上映禁止になり、日本でも度重なる映倫審査の末、R18+指定での上映が決まった問題作(映画.comより引用)。2012年日本公開作品。監督はトム・シックスで、出演はローレンス・R・ハーヴェイ、アシュリン・イェニー。
 
予め言っておきますが、グロ耐性のない人は本作を観てはいけません。何しろ世界各国で上映禁止になっている問題作です。グロ描写を全く受け付けない人にはお勧めできません。グロ描写が平気という人には、自分がどれだけのグロ描写を受け付けられるかの試金石になります。
 
通常の続編は、前作と同じ世界を引き継ぐものですが、本作の場合、前作『ムカデ人間』の熱狂的ファンが凶行に出るというメタ映画的な構造になっています。だから、前作の出演女優が本人役で登場します。虚構の世界を越え、現実味のある話にする効果を狙ったのでしょうか。本作のような過激な作品に対する、「真似する奴がいたら、どうするんだ?」という批判を逆手に取ったかのようでもあり、製作も兼ねるシックス監督は、なかなかの曲者です。
 
主人公マーティンを演じる、ローレンス・R・ハーヴェイの外見が強烈です。世間に流布しているオタクのイメージを掻き集めて、じっくりコトコト煮込んだかような濃縮さです。一応、父親からの性的虐待により精神的に障害があるという設定で、不幸な境遇にあります。しかし、その同情すべき設定が免罪符にならないほど、非道の限りを尽くします。白ブリーフ一丁に白衣という、たけし軍団みたいに変態チックな装いで。
 
前作で狂気の実験を行ったハイター博士は、れっきとした医師なので、被験者に麻酔をかけ、外科手術を施して“ムカデ人間”を創造していました。しかし、無学な小男であるマーティンは、麻酔のかけ方など知らず、ホームセンターに売っているような工具で“ムカデ人間”を創造します。それはもう阿鼻叫喚の地獄絵図です。鮮血のグロさを抑えるためか、本作は全編モノクロですが、それでも残酷さは伝わってきます。実は一部カラーになるのですが、それは“ムカデ人間”が飛び散らすウンコの色だけという、『天国と地獄』の黒澤明も草葉の陰でビックリの使い方をしています。
 
“ムカデ人間”の結末は救いがなく、マーティンに復讐を果たすという勧善懲悪的カタルシスは否定されています。救いのなさという点で『徳川女刑罰絵巻 牛裂きの刑』と共通していますが、本作の方が面白みに欠けます。『徳川女刑罰絵巻 牛裂きの刑』もグロ描写だらけですが、特殊効果のチープさに、汐路章や川谷拓三の役者としての持ち味も加わり、どこかユーモラスな印象を残します。それに対し、本作はグロ描写が生々しく、登場人物に感情移入しづらいので、とっつきが悪いです。特にマーティンは銃に頼りすぎです。一般人より非力なマーティンが計画を実行するためには、銃が必要だと理屈では納得できます。しかし、終盤で銃を乱用するのは、安易な逃げのように見え、映画の面白さを削いでいるような気がするのです。
 
★★☆☆☆(2016年5月20日(金)DVD鑑賞)
 
更に続編『ムカデ人間3』もあります。
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