
禁酒法下の1920年代に栄えた黒人街ハーレムにあるナイトスポット“コットンクラブ”を舞台に、そこに展開される芸人やヤクザたちの人間模様を描く(映画.comより引用)。1985年日本公開作品。監督はフランシス・フォード・コッポラで、出演はリチャード・ギア、グレゴリー・ハインズ、ダイアン・レイン、ロネット・マッキー、ニコラス・ケイジ。
実在したクラブの話であり、登場人物には実在の人物がいたりします。NHKの朝ドラ『あさが来た』に五代友厚や福沢諭吉が登場したのと、同じようなことです。
ステージ上の歌と踊りは念入りで、グレゴリー・ハインズのタップダンスは、吹き替えなしの本物の技です。その妙技と同時進行のクロスカッティング方式で、ギャング同士の殺し合いを見せるのがクライマックスです。
このクライマックスの演出は、同じコッポラ監督の『ゴッドファーザー』と似ています。上手いことは上手いのですが、本作の原案に『ゴッドファーザー』の原作者マリオ・プーゾが参加していることもあり、ギャング物の焼き直しという印象を否めません。
ところで、本作では「ギャング(=ヤクザ)と芸能界」の関係が、はっきりと描かれています。日本では、その関係が一種のタブーとされており、昔の東映実録ヤクザ映画でもなければ、映画やテレビドラマで描かれることはありません。
また、本作のギャングはユダヤ系、アイルランド系、イタリア系、黒人系と人種や民族によりグループ分けされており、彼らがギャングを生業としているのは、根底に差別があるからです。日本のヤクザも差別によって生まれた面がありますが、それを表立って描く映画やテレビドラマは少ないです。これも一種のタブーなのでしょう。
日本でタブーに挑戦して、芸能界の裏側と民族差別を描いた映画だと、井筒和幸の『パッチギ! LOVE&PEACE』があります。この作品のクライマックスもクロスカッティング方式であり、井筒のコッポラ好きが分かります(他にはマーティン・スコセッシやジョン・ランディスも好きなようです)。しかし、好きだからと言って、「なかなか新作映画を撮らない」ことまで真似ることはないと思うのです(「撮らない」ではなく「撮れない」のか?)。
★★★☆☆(2016年5月6日(金)DVD鑑賞)
フサフサだった頃のニコラス・ケイジを見ることができます。